代替食品とは?注目される理由や導入するメリット・課題、商品例を紹介
海外で以前から広く用いられていた「代替食品」は、近年日本でも注目を浴び徐々に普及してきました。代替食品を用いることには様々なメリットがあるので、課題点も理解した上で活用すれば、食生活をより豊かにできるでしょう。
本記事では、代替食品の概要をはじめ、利用されるようになった背景や種類、課題などを紹介します。代替食品について知ることは、食の選択肢を広げ、食にまつわる多様な問題に対応するためにも役立ちます。
消費者側としてだけでなく食料品を扱う事業を行う方も、代替食品の基礎知識を押さえて上手に活用しましょう。
代替食品(だいたいしょくひん)とは?
代替食品は、「だいたいしょくひん」と読み、見た目や味を他の食品に似せて、別の原材料を使って作った加工食品のことをさします。
一般的に親しまれている身近な代替食品には、カニカマやマーガリン、魚肉ソーセージや大豆ミートなどがあります。
代替食品は主に飲食店で提供される他、冷凍食品の原材料として使われることが多いです。また、料理用の食材として販売されているものもあります。
代替食品が注目されている背景
かつては、「高価な食材を手頃な価格で味わう」ことが、代替食品を製造する主な目的でした。
バターの代替食品であるマーガリンがわかりやすい例です。生乳の脂肪分が原料であり大量生産が難しいバターは、一般的に価格が高く購入しづらいため、安価なマーガリンが普及しています。
しかし、現在は「本物と似たものを安く」という目的に加えて、アレルギーやヴィーガンの方、健康志向の高い方に向けて製造される代替食品の需要も高まってきました。
そのため、価格よりも美味しさに重点が置かれた、味や食感が本物とほとんど変わらない代替食品も販売されています。例えば、大豆などの植物由来の原材料を使った「プラントベースフード」が有名です。
また、代替食品が注目されるようになった背景には、増え続ける世界人口による食糧問題も関係しています。代替食品は、近い将来に起こり得る「タンパク質危機」の対応に役立つと考えられています。
タンパク質危機とは、肉や魚の需要に供給が追い付かなくなり起こるとされる問題です。植物性タンパク質で代替し、肉や魚以外からタンパク質を摂取することが、危機への対策のひとつとなります。
さらに、代替食品を取り入れることは、環境問題への対策にもつながるとされています。
家畜の飼育の過程では、地球温暖化の要因となる温室効果ガスが多く発生する点が問題視されているといわれており、飼育のために森林伐採が行われることもあります。食肉の代わりに代替食品を利用することで、こうした環境への負荷軽減が期待できます。
代替食品の具体例
代替食品には様々な種類があります。ここからは、代表的なものを肉・魚・乳製品・その他のカテゴリー別に紹介します。
それぞれのカテゴリーで、代替食品の具体例や特徴を詳しく見ていきましょう。
【肉】代替食品の例
「代替肉」は、主に植物性食品を原料として、味や風味、食感を再現した加工肉です。
代替肉として有名な大豆ミートは、大豆を加熱し高圧をかけ、乾燥させて作られます。乾燥した状態のまま売られるものや、ブロック・ミンチなど固形のものなど、多様な種類の商品があります。
通常の肉と同じように、ハンバーグやから揚げ、餃子など、様々な料理に使えて便利です。
また、「培養肉」も代替肉のひとつで、牛や豚の細胞を培養して作られます。原料に動物の細胞を用いることから「本物の肉の代用品」といえる代替食品です。
近年は、コオロギやイナゴなどの昆虫を加工した「昆虫食」も注目されはじめています。食べやすさを重視して粉末状に加工されているケースが多く、例えば、コオロギの粉末を混ぜたせんべいなどが販売されています。
なお、グローバルでは食用コオロギを「クリケット」と呼びます。食用に養殖されたヨーロッパイエコオロギを粉末に加工しており、100gあたり牛の約3倍のタンパク質を含みます。
亜鉛・鉄分・カルシウム・食物繊維なども豊富で、現在では単なる代替食品の枠を越えているともいえます。
【魚】代替食品の例
「代替魚」も代替肉と同様に、主に植物性食品を使い、食感や味、匂いなどを魚に似せて作られたものです。
使用する食材や加工の工程の違いにより、様々な種類があります。具体的には、魚の風味や食感を再現したフライ、こんにゃく粉などを使用したマグロやサーモン、豆類を使用したツナ缶などが一例です。
【乳製品】代替食品の例
乳製品の代替食品は、植物性の食材を砕いて作られた「代替ミルク」と呼ばれるものです。牛乳アレルギーを持つ場合に役立つ他、健康目的でも注目を集めるようになりました。
代表的なのは豆乳です。大豆を原材料とした日本でもメジャーな代替ミルクで、タンパク質を多く含みます。
アーモンドが原材料のアーモンドミルクは、低カロリーで低糖質のためヘルシー志向の方に支持されています。また、オーツ麦が原料のオーツミルクは、食物繊維が豊富です。
近年は、お米が原料のライスミルクも注目されています。
代替ミルクの他、乳脂肪の代わりに植物油脂を使用したチーズ代替素材もあります。
【その他】代替食品の例
ここまで紹介した代替食品の他にも、様々な種類があります。
例えば、大豆などの植物性原料を使用した代替卵は、鶏卵の食感や風味に似せて作られた食品です。
小麦の代替食品も広く活用されています。大豆粉・米粉・とうもろこし粉などを使った小麦不使用の食品は、グルテンフリーのため小麦アレルギーにも対応可能です。
さらに、米の代替食品もあります。キャベツやカリフラワーが原料で、主食を野菜に置き換えて摂取できるため、糖質制限中の方にも便利な食品です。
食品・飲料事業者が代替食品を扱うメリット
代替食品を扱う業界としては、主に小売店やレストランなどの食品・飲料事業者が挙げられます。このような事業者が代替食品を扱うことには、様々なメリットがあります。
一般的に代替食品には健康的なイメージがありますが、そのイメージどおり、低脂質や低カロリーで、コレステロールが少ない代替食品が多く販売されています。代替食品を取り入れることで、健康志向の方に向けて自社商品をアピールしやすくなるでしょう。
なお、2020年4月1日から食品表示法により、消費者向けにあらかじめ包装された全ての加工食品に栄養成分表示が義務付けられました。表示義務があるのは、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウム(食塩相当量)です。
このことは消費者の購買動機に繋がるため、各食品メーカーが意識して開発を行っています。
また、前述のとおり、代替食品は環境問題の側面でも注目されています。食品・飲料業界の企業が代替食品を取り入れれば、環境問題に気を配っていることを間接的に伝えることが可能です。
消費者が環境や地域、人々に配慮した消費行動をさす「エシカル消費(倫理的消費・道徳的消費)」を意識した行動をとることは、環境問題の解決に貢献します。
加えて、アレルギーやヴィーガン、宗教上の理由などの多様性に配慮できる点も代替食品の魅力です。メニューのラインナップが豊富になるため、集客の幅をより広げられます。
さらに、原価の高い食品を安価な代替食品で代用すれば、コスト削減に繋がる可能性もあります。ただし、代替肉など通常の食品より高額なものもある点には注意しなくてはなりません。
代替食品を開発・製造する際の課題
代替食品の開発・製造にはメリットが多い反面、課題も残されています。
代替食品はまだ市場規模が小さく、生産コストを削減しづらいため、大量生産が難しいものも少なくありません。
また、世間での知名度はまだ低い状態で、味が合わないと感じる方も一定数いるため、消費者に馴染みやすくなる下地を作る必要があるでしょう。
代替食品素材を使用する際は、景品表示法※上、問題がない表示としなければならない点にも注意が必要です。
例えば、消費者が代替食品であることが理解できるよう、「大豆を原材料に使用」と表示するなどの配慮が欠かせません。特に、アレルギー表記への配慮は徹底する必要があります。
さらに、アレルギー物質が混入するコンタミネーションにも気をつけなくてはなりません。
ただし、課題を考慮しても代替食品を取り入れるメリットは多いといえます。表示方法に気をつける、品質向上を目指すなどの工夫をしながら、開発・製造を検討すると良いでしょう。
代替食品の開発ヒントを探すなら「ドリンクジャパン」へ
代替食品の開発は、新しいことを取り入れる選択肢のひとつとしておすすめです。代表例である大豆ミートなどの食品から豆乳などの飲料まで、代替食品の種類は幅広く存在します。
選択肢が多いからこそ、代替食品の開発・製造に迷う方も多いかもしれません。まずは、身近で親しみやすい豆乳などの飲料から知見を深めてはいかがでしょう。知識を身につけて業界のトレンドを知ることや新商品開発の原材料探しにこだわることは大切です。
代替食品開発のヒントを探すなら、「ドリンクジャパン」への参加をおすすめします。ドリンクジャパンとは、多くの飲料業界関連企業が出展する、飲料・液状食品の開発・製造展です。
オーツミルクなど、飲料の代替食品に関わる企業も出展することがあり、代替食品の知識を深めながら飲料の最新情報を学べます。サンプル品が貰えたり試飲できたりする場合もあるため、代替食品をより身近に感じることができるでしょう。
なお、ドリンクジャパンに来場する際は、事前の来場登録をすれば無料で入場できます。
ドリンクジャパンの詳細は以下のとおりです。
また、ドリンクジャパンでは、出展者側として参加する企業からの申し込みも受け付けており、出展にもメリットがあります。
出展者側として参加すれば、原材料からパッケージまで、幅広く興味を持つ企業とのパイプができる他、具体的な商談が行えるため、サンプル受注につなげることも可能です。
来場する方にも出展する方にも、きっと満足いただける展示会です。ぜひこの機会に、ドリンクジャパンへの参加をご検討ください。
知識を深めて代替食品を活用しよう
代替食品とは、主に植物性の素材を原料として、肉・魚・乳製品などの動物性食品に似せて作られたものです。
アレルギーや多様な食文化への配慮に役立つ他、近年は、環境問題や食糧危機に対応する目的も加わり、少しずつ普及しはじめています。
ただし、日本ではまだ代替食品の市場規模が大きくなく、開発や導入には課題も残されているのが実情です。今後、知識を深めながら導入を検討していくと良いでしょう。
飲料業者が新しいことを取り入れるなら、代替食品の利用も選択肢として有効と考えられます。代替食品を事業に導入するヒントを得たいなら、展示会などへの参加もご検討ください。
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリア トスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。 昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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