濾過(ろ過)装置とは?仕組みや種類から選び方のポイントまで紹介

濾過(ろ過)装置は、様々な業界で用いられています。日常生活でも濾過が行われているシーンは多く見られ、快適な暮らしを送るために欠かせない身近な仕組みです。

濾過の仕組みは一般的にも知られていますが、濾過装置の種類や詳しい内容までは知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、濾過装置とは何か、目的や仕組みから種類や使用される事例、選び方まで紹介します。

飲料業界など濾過装置が必要な事業者の方は、濾過装置や濾過の仕組みに関する知識を深め、目的に合ったものを導入するための参考にしてください。



濾過(ろ過)装置とは?

濾過とは、液体や気体に含まれる特定物質(汚濁物質や異物)を濾材によって取り除く作業のことです。一般的には液体と固形物を分離する作業として知られていますが、気体と固形物を分離することも濾過に該当します。

濾過を行うために使用するものが「濾過装置」で、液体や気体に含まれる特定物質を取り除くために濾材(穴が空いた多孔質の材料)が搭載されています。

なお、濾過そのものは気体と固形物の分離も該当しますが、工業用として使用される濾過装置は、液体の濾過を目的に作られることが一般的です。本記事では、液体の濾過にスポットを当てて説明します。



濾過(ろ過)装置の構造と仕組み

濾過装置には、多孔質の濾材が搭載されています。濾材に液体を通すことで、異物や汚れが取り除かれる仕組みです。

取り除かれた異物や汚れは、濾材の部分に溜まっていきます。ただし、濾材の孔よりも小さな物質の場合は通過してしまうため、取り除くことはできません。

基本の濾過装置は、入口配管、濾材(フィルター)、出口配管、ドレン弁から構成されます。ドレン弁とは、濾過装置を洗浄する際に、異物を含む排水を出すためのものです。

濾過装置に搭載された入口配管から液体を入れ、濾材を通し、濾過された液体を出口配管から取り出して使用します。

また、自動洗浄機構がある濾過装置の場合は、フィルターに蓄積した異物を除去する機械機構も搭載されます。



濾過(ろ過)装置の主な種類

濾過装置には多様な種類がありますが、主にケーク濾過装置・ケークレス濾過装置・清澄濾過装置の3種類に大別されます。

3種類の濾過装置の概要を以下にまとめました。なお、ケークとは、濾材に溜まった異物や汚れのことです。

「ケーク濾過装置」は、原水を濾過水流出の方向に注入して濾すため、濾過の進行とともにケークが濾材に溜まり、ケーク層ができるところが特徴です。ケーク層の形成にともない濾材が目詰まりを起こすので、溜まったケークの除去や濾材の交換を行う必要があります。

「ケークレス濾過装置」は、液体を高速流動させながら濾すため、ケークが攪拌されながら強制的に除去される点が特徴です。ケーク層ができないので濾材に溜まることがなく、連続運転が可能となります。ケーク濾過措置と比較して、より効率的に濾過処理できる点がメリットです。

「清澄濾過装置」は、原水を多層粒状層の濾材に注入して濾す点が特徴で、主に浄水場の濾過装置として利用されています。濾材の隙間より小さい粒子でも凝集作用により除去されるため、濾過により清澄な水となります。

なお、清澄濾過装置は、原水注入方向の違いと駆動方式の違いにより、さらにそれぞれ以下のように分類されます。

【原水注入方向の違い】

  • 下向流方式
  • 上向流方式
  • 上下向流方式

【駆動方式の違い】

  • 重力式清澄濾過装置
  • 加圧式清澄濾過装置


濾過(ろ過)装置が使われる業界と使用例

濾過装置は、食品・飲料・医療・化学・教育・娯楽など、多様な業界で用いられています。日常生活でも濾過装置が使われるシーンは多いです。身近なシーンや用途を見ていきましょう。

液体を濾過するシーンでは、浄水器を使って水道水を濾過するのが代表例です。ダムから浄水場に送られた雨水や河川水は、浄水処理されるとともに濾過により小さな濁りが除去され、飲み水として利用できる水道水になります。水道水が家庭の浄水器のフィルターを通ることで、さらに不純物が除去されます。

また、コーヒーやお酒も濾過により作られます。ドリップコーヒーをフィルターで濾して抽出するコーヒードリッパーも、身近な濾過装置のひとつです。お酒の製造工程でも、濾過装置を用いて酒と酒粕に分離します。 

さらに、水槽の水も濾過装置が使用されるものとして有名です。水族館などの水槽は、生き物の飼育に適した環境にするために濾過を行っています。

気体を濾過するシーンでは、掃除機や空気清浄機が挙げられます。掃除機にはフィルターが付属しており、吸い取ったゴミを分離できます。空気清浄機も空気中のホコリや花粉をフィルターに吸着させて除去する仕組みです。



飲料業界における濾過装置の役割とは

濾過装置は前述のとおり様々な業界で使われますが、工業用の濾過装置が用いられる代表例が飲料業界です。飲料業界では、濾過装置が重要な役割をもちます。

菌や酵母、原料の残りかすなど不要物の除去は、品質管理や安全性の確保のためにも大切なポイントです。液体に含まれる不要物が濾過により取り除かれることで、高品質で安全性の高い飲料が作られます。濾過を工夫することで、製品の独自性を出すことにもつながるでしょう。

濾過装置には様々な種類がありますが、濾過性能やメンテナンス方法がそれぞれ異なります。飲料業界で濾過装置を有効活用するには、選び方も重要です。



飲料業界での濾過装置の使用事例

飲料業界ではどのように濾過装置が使われているのでしょうか。ビール・ジュース・ミネラルウォーターの製造における濾過装置の使用事例を見ていきましょう。


ビール

ビールは酵母の働きによって糖化した後、濾過装置で固形物を取り除く必要があります。濾過によりビールの清澄化や微生物の除去ができ、物理的な耐久性(時間の経過に伴う混濁に対する耐久性)も得られます。

また、濾過をゆっくり行うと、ビールの濁りを防げる点もメリットです。香味や泡立ちの良さを確保できるため、品質を上げる目的でも濾過装置が役立つのです。

ただし、濾過することで、ビールの旨味に役立つ物質まで除去されるケースもあります。そのため、濾過をあえて行わない酵母の入ったビールも製造されています。


ジュース

フレッシュジュースの製造工程では、果物の種や皮などの異物の除去に濾過装置が役立ちます。

果実を絞って作るフレッシュジュースの場合、手作業により異物を取り除くケースも多いですが、時間がかかるため効率的とはいえません。濾過装置を導入し除去作業を任せれば、より効率良く製造できるようになります。

また、濾過の度合いを選べる濾過装置を用いれば、濁りのあるジュースも作れるため、商品のバリエーションが広がります。

現代のジュース製造業界で活用される濾過装置は、異物除去・清澄化に加えて、ビタミンなどの栄養成分の維持や、保存性を確保することを目的とした高性能な濾過装置が求められています。


ミネラルウォーター

ミネラルウォーターは、原水である地下水に濾過や加熱殺菌などの処理を行ったものです。濾過装置によって不純物を取り除き、水の品質を高めます。非加熱のミネラルウォーターの場合は、濾過により除菌を行うこともあります。 

ただし、濾過装置によってはミネラル分まで除去するものもあるため、選び方には注意が必要です。

ミネラルウォーターの製造工程は、地域によっても異なります。ヨーロッパでは原水の自然成分を損なわないよう、最小限の濾過と非加熱が主流です。日本でのミネラルウォーター用の濾過装置も、ミネラル成分を残せる仕様の導入が行われるようになりました。



濾過(ろ過)装置を導入する際のポイント

前述のとおり、濾過装置には様々な種類があるため、事業に導入する場合は選び方が重要となります。濾過装置は長期に渡って使用するものでありコストもかかるので、失敗のリスクは避けたいところです。

濾過装置の導入で失敗しないためにも、選び方のポイントを押さえましょう。3つのポイントを紹介するので、導入を検討する方は参考にしてください。


除去したいものや濾過の程度を明確に検討する

何をどのくらい濾過したいのか、最初に目的を明確にしておくと選びやすくなります。除去できる物質の種類や大きさは濾過装置によって異なるため、目的に合わせて選ぶことが大切です。

濾過精度が低いと濾過が不十分となり、求める品質が確保できません。逆に濾過精度が過大なものを選ぶと、濾材が目詰まりを起こしやすい場合もあるため注意が必要です。

求めるレベルに該当する濾過装置を選べば、目的に合った濾過ができ無駄もありません。目的を明確にしておくとともに、原水の水質を把握することも大切です。


コストに見合った設備を選択する

濾過装置の導入には一定のコストがかかります。イニシャルコスト(導入にかかる初期費用)とランニングコスト(運転や維持にかかる費用)を考えなければなりません。

設計条件を誤り過剰な設備を導入すると、本来は不要なものでも、設置費用やメンテナンス費用が発生してしまいます。するとコストが増大して、大きな負荷に繋がる懸念があります。

事前に目的を明確にし、予算も踏まえて必要な設備のみを選ぶと良いでしょう。


情報収集のためには設備見学もおすすめ

濾過装置を導入する際には、濾過装置の基本情報から選び方まで、幅広い知識をつけたいところです。濾過装置に関する知識を深めるためにも、情報収集を行うことが求められます。

まずは多様な濾過装置を比較しながら、性能や価格、サイズなどの違いを知ることからはじめましょう。情報を集めるうちに、ご自身の事業に適した濾過装置の条件がわかる場合もあります。

情報収集とともにおすすめなのが、実際に濾過装置を見学する方法です。飲料の製造設備に含まれる濾過装置を見学できる場は様々あります。ご自身の目で確認できる場として、個別の企業の工場などに限らず、多様な企業が集まる展示会も選択肢として挙げられます。



「ドリンクジャパン」では濾過(ろ過)装置の実機を見られる

濾過装置の情報がほしい方や導入をご検討中の方には、「ドリンクジャパン」への参加をおすすめします。ドリンクジャパンとは、多くの飲料業界関連企業が出展する、飲料・液状食品の開発・製造展です。来場すれば、飲料の製造設備を実際に見られます。

ドリンクジャパンの製造エリアに新しくできた品質管理・衛生ゾーンでは、濾過設備やフィルターの出展があります。実機を見ながらサイズや性能を確認できるので、導入の検討材料として役立つでしょう。

来場登録すれば無料で入場でき、来場だけでなく出展者側として参加するメリットもあります。

出展者として参加すると、濾過装置の導入を検討している企業はもちろん、原材料からパッケージまで、幅広く興味を持つ企業とのパイプができます。意欲の高い来場者と、具体的な商談を行うことも可能です。

以上のように、ドリンクジャパンは来場、出展ともに様々なメリットがある展示会です。ぜひ参加をご検討ください。

■ドリンクジャパン



濾過(ろ過)装置は飲料業界でも重要な設備

濾過装置は様々な業界で用いられており、液体・気体から固形物や不純物を効率良く取り除くために欠かせないものです。多様な事業だけでなく一般人の生活においても、濾過は身近に存在しています。

飲料業界でも、濾過装置は飲料の品質管理をメインに重要な役割をもちます。導入で失敗しないためには、濾過の目的を明確にし、コストに見合った設備を選ぶことが大切です。

濾過装置を導入するにあたり検討材料のひとつとして、ドリンクジャパンをぜひお役立てください。



▶監修:門脇 一彦(かどわき かずひこ)

岡山商科大学経営学部特任教授、キャリアセンター長
國學院大學経済学部兼任講師
1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。



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