小ロット生産とは?メリット・課題や生産効率を高める方法を紹介

小ロット生産は、過剰在庫のリスクを抑えつつ顧客ニーズの変化に柔軟に対応できるなど、発注者にとってメリットが多い生産方法です。一方、改善すべき課題もあるため、小ロット生産を受け付けていない企業もあります。

本記事では、小ロット生産の概要や注目されている背景、特徴や課題、効率的に行う方法をわかりやすく紹介します。小ロット生産の委託や、自社での導入を考えている方はぜひ参考にしてください。



小ロット生産とは少ないロット数での生産・出荷のこと

小ロット生産とは、少ないロット数での生産・出荷をさします。ロットとは、製造業でよく使われる、生産・出荷の最小単位を意味する言葉です。100個で1ロット、10個で1ロットなど、ロットに対する製品の個数は品目や企業によって異なります。

生産者側は、注文を受ける最小単位であるロット数を決め、あらかじめ告知することが一般的です。A・B・Cの商品それぞれを1ロットずつなど、多品種の商品を少ないロットで注文するケースを、注文者側は「小ロットの多品種発注」とよび、生産者側は「多品種少量生産」とよびます。


小ロット生産が注目を集めている背景

小ロット生産が求められる背景には、ニーズの多様化や産業技術の変化などが挙げられます。

消費者のニーズは多様化していますが、従来の大ロット生産では、これらの細かいニーズに十分に応えることが困難でした。 そこで、様々なニーズに柔軟に応えられる小ロット生産(多品種少量生産)が注目されています。

また、近年はAI(人工知能)やIoT技術(あらゆるモノをインターネットにつなぐ技術および、フレキシブルな生産装置)が登場し、製造業の自動化やデータ活用が進んでいます。

例えば、大量生産の仕組みを活用しながらも細かいニーズに応え、オーダーメードなどの製品作りを行う「マス・カスタマイゼーション」は、今後実現を期待されている製造方法のひとつです。

マス・カスタマイゼーションの実現が望まれる昨今、いち早く競合他社との差別化を図る方法として、小ロット生産(多品種少量生産)に移行するケースが増えています。



小ロット生産と大ロット生産の違い

小ロット生産と大ロット生産の主な違いは、下記のとおりです。

  • 納期の違い
  • 単価の違い
  • 生産場所の違い

それぞれ簡潔に紹介します。


納期の違い

大ロット生産と比べると、小ロット生産の方が生産個数は少ないため、納期が短い傾向にあります。大ロット生産よりも短い納期でスピード感のある商品提供ができる点は小ロット生産の特徴です。

ただし、実際の納期は工場の生産能力にも依存します。

例えば、とある商品に対する生産能力が1日1万個の工場の場合、1万個以内の受注であればロット数による納期に大きな違いはありません。一方、受注数が2万個など1日の生産能力を超える大ロットの受注と、100個など1日の生産能力に納まる小ロットの受注では、小ロットの方が納期は短くなります。


単価の違い

製品ひとつあたりの「単価」は、一般的に小ロット生産より大ロット生産の方が安くなります。なぜなら、大ロット生産の場合は同じ工程で一度に大量の製品を作れるためです。

小ロット生産の場合は、少数の生産でも工場の設備全体を稼働する必要がある、品目に応じて環境や設定を変える必要があるなど、大ロット生産に比べて手間やコストがかかる傾向にあります。


生産場所の違い

それぞれの生産方法に適した場所は、工場の規模や生産能力などの条件が異なります。

大ロット生産の場合は、生産数にあわせて、大量の設備や人手、大きな土地が必要です。また、人件費を考慮すると、海外で生産したほうがコスト削減につながるケースも多くあります。

一方、小ロット生産を行う工場は、細かいニーズに応じた柔軟な生産を行うため、大ロット生産を行う工場ほどの規模の設備や人手は必要ありません。そのため、小ロット生産を行う工場では、大ロット生産の受注に対応していないケースもあるかもしれません。

なお、大ロット生産が得意な工場もあれば、小ロット生産が得意な工場もあり、どちらかが極端に優れているわけではありません。例えば、オーダーメードの小ロット生産の場合、顧客に近い場所で生産するほうが、納期を短くできて付加価値が向上できます。



小ロット生産のメリット・特徴

小ロット生産は、基本的に商品の生産を委託する側にとってメリットが多い生産方法です。おもな特徴やメリットは、下記のとおりです。

  • 過剰在庫のリスクを抑えられる
  • 試作品の作成に向いている
  • 需要にあわせた製品提供が可能

それぞれ簡潔に紹介します。


過剰在庫のリスクを抑えられる

市場の変化が激しくニーズが多様化する現在、大ロット生産は過剰在庫のリスクが高い点が課題です。その点、小ロット生産は消費者のニーズにあわせて少数を生産するため、生産者側・注文者側ともに過剰在庫のリスクを回避できます。 

過剰在庫を防ぐことで、在庫管理の手間や廃棄に伴うコスト増加を防げる点も、小ロット生産の大きなメリットでしょう。

なお、在庫管理方法については以下の記事で紹介しているため、気になる方はあわせてご覧ください。

▶関連記事:在庫管理とは?目的と重要性から課題や効率化のアイデアまで解説


試作品の作成に向いている

小ロット生産は、新商品開発に伴う試作品の製作に向いています。試作品を少数生産して顧客の反応をうかがい、反応が良い場合は生産数を増やす、不評な場合は改良して再テストするなど、柔軟に対応ができる点がメリットです。

新商品は必ずしもヒットするわけではありません。大ロットで生産した商品が不評だと、余った在庫の管理や処理にかかるコスト負担など、企業へのダメージがあるため注意してください。


需要にあわせた製品提供が可能

小ロット生産は、細かいデザインや品質など、注文者のニーズにあわせて生産ができる点がメリットです。ニーズの多様化により多品種少量生産を希望する企業も多いため、小ロット生産に対応している工場は、受注件数の増加が期待できるかもしれません。

また、企業側は小ロット生産を活用して商品のバリエーションを増やすと、競合他社との差別化も図れます。



小ロット生産のデメリット・課題

小ロット生産のデメリットや課題には、下記の点が挙げられます。

  • 多品種少量生産は生産効率の低下につながる
  • コストが割高になる可能性がある

それぞれ簡潔に紹介します。


多品種少量生産は生産効率の低下につながる

小ロットで多品種少量生産を行うためには、工場で品目ごとに設備の設定や段取り変更が必要です。そのため、生産効率の低下につながる可能性があります。

一方、大ロット生産の場合は、同じ設定・段取りで大量生産できます。

生産効率の低下は、前述した小ロット生産によってコストが割高になる要因のひとつなので注意しましょう。


コストが割高になる可能性がある

小ロット生産は、受注者側にとって手間や時間がかかる生産方法のため、生産コストは大ロット生産よりも割高になる傾向にあります。そのため、大ロット生産よりも単価が高めに設定されていることが一般的です。生産に手間がかかると割高になるだけでなく、原材料の調達費用も高くなります。

注文者側は、需要があり、売れる見込みがある商品なら、小ロット生産より安い単価で発注できる大ロット生産を利用した方がいいケースもあるでしょう。



小ロット生産を効率化する方法

小ロット生産を効率化する方法は、下記のとおりです。

  • 受注パターンに適した生産方法を取り入れる
  • 段取り替えの改善を図る
  • 生産管理システムを導入する

それぞれをわかりやすく紹介します。


受注パターンに適した生産方法を取り入れる

受注頻度やロットサイズによって分類し、受注パターンに適した生産方法を取り入れると、小ロット生産でも効率化を図れます。

まず、受注頻度を実績から「月に●回以上受注がある製品は多頻度受注」など、数値で分類しましょう。次に、ロットサイズは1回あたりの平均受注金額(平均ロットサイズ×単価)を基準にし、基準以上であれば大ロット、基準以下であれば小ロットと分類します。

上記2つの分類を組み合わせて「多頻度大ロット」「多頻度小ロット」「少頻度大ロット」「少頻度小ロット」に分類し、特徴にあわせた生産方法を採用すると効率化が図れます。

パターンごとの特徴と、効率化の具体的な方法は、下記のとおりです。


段取り替えの改善を図る

小ロット生産は、段取り替えの時間や回数が増える傾向にあるため、段取り替えの改善は重要です。段取り替えは、生産ラインを停止して行う「内段取り」と、生産ラインを停止せずに行う「外段取り」に分けられます。

内段取りは生産ラインを停止してしまうため、作業分析を行って外段取り化できるものが含まれていないか整理したり、金型・治工具・刃具をワンタッチ化したりして効率化を図りましょう。

外段取りでは、準備完了品置き場やレイアウトの見直し、手順の標準化、整理・整頓・清掃・清潔・躾(5S)の徹底で効率の改善を図れる可能性があります。


生産管理システムを導入する

生産管理システムとは、生産管理を系統的に行うために、生産に伴う現品や情報、原価の流れを総合的に管理するシステムをさします。生産管理システムを導入すると生産に関わる業務を一元管理できるため、データの見える化によって業務の効率化やコスト削減が期待できます。

近年は、AIやIoTをはじめとするデジタル技術を活用し、ビジネスモデルそのものに変革をもたらすDX(デジタルトランスフォーメーション)に欠かせない要素として、製造業の多くの企業で導入が進んでいます。

DXについて詳しくは以下の記事で紹介しているため、気になる方はぜひご覧ください。

▶関連記事:DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?定義や食品業界の具体例をわかりやすく解説



小ロット生産向きの商品例

小ロット生産は、小物グッズやノベルティー、オリジナルグッズなどに向いているとされています。

例えば、エコバッグやタンブラー、缶バッジ、キーホルダー、文具、飲料などが、小ロット生産に向いている商品の一例です。

近年は、小ロット生産に3Dプリンターを使用する事例も増えています。安価にオリジナルグッズや試作品を制作できるケースもあるため、将来的には生産コストに関する小ロット生産の課題も克服されるかもしれません。


小ロット生産を受注している企業の事例

小ロット生産を受注している企業で製造している商品の具体例をいくつか紹介します。

飲料業界では、小ロットから健康茶や粉末飲料、ゼリーなどの受注をしている企業があります。地域の農家や生産者とコラボして「農家サイダー」や果汁飲料を作っており、うまく活用すれば、こだわりをアピールできる独自の商品開発ができるでしょう。

その他、企業によっては最低ロット1,000〜2,000本ほどから受注している企業もあります。新商品の試作品や、宣伝のためのノベルティー飲料など、用途にあわせた発注ができます。



飲料業界で小ロット生産を検討するなら「ドリンクジャパン」への参加がおすすめ

小ロット生産を活用して商品開発を行う場合は、委託先企業を見つける必要があります。自社工場で小ロット生産の導入を考えているなら、コストや生産効率を踏まえた、導入設備の比較検討が大切です。

飲料業界で小ロット生産の委託・導入を検討している場合は、ぜひドリンクジャパンにご来場ください。ドリンクジャパンとは、飲料・酒類の研究・製造にかかわる製品が一堂に出展する国際商談展です。製造・包装機械や研究機器から、新商品開発に欠かせない原料・素材などが出展します。

マーケティング、販促商品などを扱う出展社と、多数来場される飲料、酒類、食品メーカーの間で、活発な相談・商談が行われる日本唯一の飲料・液状食品に特化した展示会です。

来場登録すれば無料で入場可能、出展側として参加すれば自社製品のアピールも可能で、来場側・出展側どちらにもメリットがあります。

受託製造・OEMに関連する企業や製品が出展することも多く、開発・導入に役立つ情報収集や委託先とのつながりを作る場としての活用もできます。

■ドリンクジャパン

小ロット生産の委託・導入に興味がある人は、ぜひご来場ください。



小ロット生産は多様なニーズへ柔軟に対応できる

小ロット生産は、少ないロット数での生産を意味します。従来の大ロット生産とは違い、過剰在庫のリスクを抑えつつ、ニーズの変化にも柔軟に対応できる点が小ロット生産の大きなメリットです。

一方、コスト増大や生産効率の低下など課題も多いので注意しましょう。小ロット生産の委託・導入を考えているなら、有益な情報収集や、製品の比較検討ができる展示会への参加がおすすめです。

飲料業界で小ロット生産の委託・導入を考えているなら、日本唯一の飲料・液状食品に特化した展示会であるドリンクジャパンに、ぜひ足を運んでください。



▶監修:門脇 一彦(かどわき かずひこ)

岡山商科大学経営学部教授、キャリアセンター長
國學院大學経済学部兼任講師

1959年大阪市生まれ。神戸大学経営学研究科博士後期課程、博士(経営学)。大手空調企業で機器開発及び業務改革を実践後、ITコンサルタントを担い現在に至る。2021年より現職。経営戦略、技術管理、IT活用、医療サービスマネジメントなどを研究。



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