果汁100%ジュース「濃縮還元」と「ストレート」の違いは?見分け方を解説

果汁100%ジュースには、「濃縮還元」と「ストレート」の2種類があります。果汁100%と聞くと「素材そのものの新鮮な味わい」と思う方もいるかもしれませんが、濃縮還元とストレートは、製法や味わい、価格など様々な点で異なります。

そこで本記事では、果汁100%ジュースの濃縮還元とストレートの違いやそれぞれのメリット・デメリットなどを解説します。

果汁100%ジュースに関する有益な知識・情報を得る方法も紹介するので、果汁100%ジュースの製造・販売を考えている方はぜひ参考にしてください。



果汁100%ジュース「濃縮還元」と「ストレート」の概要・製法の違い

果汁100%ジュース「濃縮還元」と「ストレート」の違いは、下表のとおりです。

それぞれ詳しくみていきましょう。


「濃縮還元」は一度濃縮した果汁を元の濃度に戻したもの

濃縮還元とは、原材料である果実を搾汁し、水分を除いて保管した濃縮果汁に再度水分を加えて元の濃度に戻したもの、またはこれに砂糖類や蜂蜜などを加えたものをさします。

なお、濃縮果汁とは、果汁から水分を抜いて濃縮したもの、もしくはこれに果汁や濃縮果汁、還元果汁を混合したもの、またはこれらに砂糖類や蜂蜜などの甘味を加えたものをいいます。

濃縮還元の表示は「○○ジュース(濃縮還元)」で、「○○」には使用した果実の最も一般的な名称を表示するよう定められています。

濃縮は60~80℃の高温減圧下で行われることが多いため、ストレートに比べて品質が落ちることがデメリットです。そこで、凍結濃縮や限外濾過膜による方法や濃縮果汁に生の果汁を添加するなどの工夫がされています。

また、濃縮方法には「真空蒸発法」や「凍結濃縮法」「逆浸透濃縮法」などがあります。


真空蒸発法

真空蒸発濃縮法は、減圧した装置内で果汁を加熱して水分を蒸発させる方法です。

濃縮中に香りや一部の栄養素は減少しますが、比較的低い温度で水分が蒸発し、短時間で濃縮できることがメリットです。効率的な方法のため、広く一般的に使われています。


凍結濃縮法

凍結濃縮法は、果汁を凍らせることで果物の水分と水に溶け込んでいる物質を分離し、物質の濃度を高める方法です。

果汁を凍らせると水分は氷になりますが、水に溶け込んでいる物質は凍りにくい性質を持っています。氷を取り除くと、残った果汁は水分が減少し濃縮された状態になります。

凍結濃縮は、加熱が必要な濃縮方法と比べて高濃度の濃縮が可能です。風味を残すことができたり、熱に弱い成分の変質を防ぐことができたりとメリットが多い方法です。

濃縮処理に時間がかかったり、大掛かりな装置が必要になったりするため、高付加価値の製品向けの濃縮方法です。とはいえ、コストを抑えつつ濃縮が可能な「界面前進凍結濃縮」の開発も行われています。


逆浸透濃縮法

逆浸透濃縮法は、水分だけを通す特殊な膜を使って、原料から水分を取り除く非加熱の濃縮方法です。

香りが損なわれにくいこと、非加熱なので熱による変化を受けやすい成分の変化が見られないことがメリットです。

しかし、逆浸透膜は特定の分子のみを通すので、水分以外の成分も一部取り除かれる可能性があります。高度な設備が必要で効率的な方法ではないことから、あまり利用されていないのが現状です。


「ストレート」は生の果実を絞ったそのままのもの

ストレートとは、生の果物を絞った汁に基本的に何も加えていない果汁100%ジュースのことです。果実を粉砕して搾ったり裏ごししたりして、皮や種を除去したものをさします。

ストレートの表示は「○○ジュース(ストレート)」で、「○○」には使用した果実の最も一般的な名称を表示する必要があります。



果汁100%ジュース(濃縮還元)のメリット・デメリット

果汁100%ジュース(濃縮還元)には、それぞれ下表のようなメリット・デメリットがあります。

濃縮還元のメリットは、加工によって重さと容量が減ることで、輸送・保管費用を抑えられ、日持ちを良くできることです。また、価格が安く手軽に楽しめることも大きなメリットといえます。

さらに、濃縮還元は容器に詰める前に糖類や果汁などを加えて味を調節するため、一定の品質が期待できます。原料である果実は収穫した時期や地域、品種などによる品質のばらつきがありますが、濃縮還元で還元濃度を一定にすることで、一年を通して安定した品質の商品提供が可能です。

一方、濃縮還元のデメリットは、高温減圧下で加工されることが多いため、元の果物の色、ビタミンなどの栄養素や香り、風味などが損なわれることです。水分を加えて還元する際に、香料や糖類、添加物などを加える必要がある点もデメリットといえます。

また、高温処理や濃縮過程に伴うエネルギー消費が増加し、環境への影響が懸念されることもあります。



果汁100%ジュース(ストレート)のメリット・デメリット

果汁100%ジュース(ストレート)には、それぞれ下表のようなメリット・デメリットがあります。

ストレートのメリットは、果実そのままの色や味、香りが楽しめることです。基本的に砂糖や甘味料、保存料などの添加物は一切使用しない点もメリットといえます。

ストレートは濃縮還元に比べて栄養が損なわれにくい傾向にありますが、衛生上の問題から加熱殺菌は行われるため、熱に弱い栄養素は損なわれやすい点に注意が必要です

また、ストレートのデメリットは加工しないために賞味期限が短いことです。輸送や保管にかかる費用が高額になりやすく、価格も高くなります。

原料である果物の品質や生産量に左右されるため、大量生産には不向きです。季節や果物の状態によって品質にばらつきが出てしまいます。

なお、ストレートは加工工程が少ないため、果肉や果汁の沈殿物が残ることがあり、見た目にクリアなジュースとしての認識が難しい場合があります。しかし、これがナチュラルさの演出にもなるため、メリットでもあります。



果汁100%ジュースの「濃縮還元」と「ストレート」のターゲット層は?

果汁100%ジュースの「濃縮還元」と「ストレート」のターゲット層は下表のとおりです。

濃縮還元とストレートは、それぞれ異なるターゲット層に支持されています。

濃縮還元のターゲットは、価格を抑えつつも日常的に果汁100%ジュースを楽しみたい方です。コンビニやスーパーでいつでも買える手軽さを求めています。

ストレートのターゲットは、フレッシュな果実そのままの色合いや、風味豊かな味わいを求める方です。健康志向の人や食の安全が気になる方も含まれます。

ターゲットのニーズやライフスタイルを理解し、適切なマーケティング戦略を展開することが売上アップにつながるでしょう。



果汁100%ジュースの見分け方

果実飲料の表記は「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」に定められており、パッケージの表現方法で果汁100%ジュースであることを見分けられます。

果汁が入った飲料には果汁10%や50%など様々な種類がありますが、以下のように一目で果汁100%だとわかる方法があります。

  • 果物の断面図や果汁のしずくの写真やイラスト
  • 「果汁100%」と表記しているフォントの大きさ
  • その他の文字表示のルール

以下で詳しくみていきましょう。


果物の断面図や果汁のしずくの写真やイラスト

果汁100%のジュースだけが、果物の断面図や果汁のしずくが落ちている写真やイラストを使用できます。ただし、無色透明な水滴など果汁ではないしずくの表現であれば、果汁100%以外でも使用可能です。

果汁5~100%未満の飲料は、果物の断面図や果汁のしずくが落ちている写真・イラストは使えませんが、果実のリアルな絵やイラストは使用可能です。

果汁5%未満または果汁を含まない場合は、果実の写真もイラストも表示できず、図案化したイラスト(みかんのキャラクターなど果実の色や形を表す程度に書かれたもの)のみ使用できます。図案化でも果実の断面図は不当表示になる点に注意してください。


そもそもジュースと名乗って良いのは果汁100%だけ

そもそも「ジュース」と名乗って良いのは、果汁100%(ストレートまたは濃縮還元)のものだけで、果汁10%〜100%未満の飲料は「果汁入り飲料」と呼ばれます。


「果汁100%」と表記しているフォントの大きさ

果実ジュース・果実ミックスジュースでは、商品名を表す文字と同一視野に14ポイント以上の大きさで果汁100%と表示することができます。

ぱっと見てフォントサイズを判別するのは難しいかもしれませんが、ひとつのポイントとして覚えておくと良いかもしれません。


その他の文字表示のルール

その他にも、以下のような果実飲料に関する文字表示のルールがあります。

  • 客観的根拠に基づかない天然・自然・生・新鮮・フレッシュの表示は禁止
  • 純正、純粋、ピュアなどの表示は禁止
    ただし、果実ジュースであり、原材料および添加物に果実の搾汁および天然香料以外のものを使用していない場合の表示は許可
  • 「栄養飲料」「健康飲料」「美容飲料」などの表示は禁止
    ただし、果汁の使用割合が50%以上のもの、またはビタミンを強化したものは、説明文中に栄養、健康、美容等の文字を使用できる
  • 特選、精選、高級、デラックス、スペシャルなどの表示は禁止


不当表示を行った場合の罰則に注意

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づき定められた公正競争規約(果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則)違反行為を行った場合、措置命令(違法な広告表示の停止を命じる)などの措置が採られます

課徴金納付命令が出る場合もあるため、100%ジュースを製造・販売するなら法律を遵守しましょう。不当な表示を行っていたことが公になれば、企業のブランドイメージは低下するだけなく、最悪の場合は消費者からの信頼が地に落ちる可能性もあります。

品質や規格などの内容が実際の物や事実より著しく優れていると消費者に誤解される可能性がある表示を「優良誤認表示」と呼びます。例えば、「100%果汁」と表示したジュースの果汁成分が実際には60%だった場合などは、優良誤認表示にあたります。

また、果汁や果肉が入っていない、または含有率が5%未満の清涼飲料水などは「無果汁」「果汁を含まず」「果汁○%」と明確に表示することが義務付けられています。

例えば、以下のような場合は不当な表示とみなされます。

  • 果汁または果肉が入っていない清涼飲料水に無果汁である旨を明記しないで、「○○オレンジ」など果実名を使った商品名をつけていた
  • 果汁または果肉が入っていない清涼飲料水の容器に、果実の図案を掲載していたが「無果汁」の表示がなかった


果汁100%ジュースの開発や製造のヒントを知りたい方は「ドリンクジャパン」へ

果汁100%ジュースの製造・販売を行うためには事前知識の習得が不可欠です。特にパッケージデザインは果汁の割合や原材料などで表示方法が異なるため、注意が必要です。濃縮還元を選択した場合は、濃縮方法も選択しなければなりません。

果汁100%ジュースの開発ヒントや製造技術、規則に従ったパッケージデザインを知りたい方には「ドリンクジャパン」への参加がおすすめです。

ドリンクジャパンは日本で唯一の飲料・酒類・液状食品の開発・製造に特化した国際商談展で、国内・海外の最新技術・サービスを比較検討できます。

果汁100%ジュースの出展もあるため、原料や添加物・製造方法を見比べて検討できます。さらに併催のセミナーでは、飲料開発・製造業界の最新トレンド情報の入手も実現します。

ドリンクジャパンは来場登録すれば無料で入場が可能な他、事前の申し込みは不要です。

また、果汁100%ジュースの新規開発・販売を考えている全国の企業に自社の製品をアプローチできるなど、来場者だけでなく出展者にもメリットがあります。製品のターゲット層に効率的に売り込めるため、新規顧客獲得につながりやすいでしょう。

出展スペースには限りがあるため、早めのお申し込みがおすすめです。

■第9回 ドリンクジャパン

 2024年11月20日(水)~22日(金)



果汁100%ジュースの種類を理解してニーズに合うものを選ぼう

果汁100%ジュースには濃縮還元とストレートの2種類があり、作り方や味わい、価格などが大きく異なります。

濃縮還元は一度濃縮した果汁を薄めて元の濃度に戻したもので、メリットは価格が安く手軽に楽しめること、デメリットは元の果実の栄養や香り・風味が損なわれることです。

ストレートは生の果実を絞った汁に基本的に何も加えていないもので、メリットは果実そのままの味を楽しめること、デメリットは賞味期限が短く高価なことです。

濃縮還元とストレートの違いを知った上で、ターゲットのニーズやライフスタイルに合う方を選びましょう。

果汁100%ジュースの開発・製造・販売を行う場合、事前の情報収集が不可欠です。その選択肢のひとつとして、100%ジュースの最新製品の素材から原料・製造装置まで比較検討できるドリンクジャパンに参加してみてはいかがでしょうか。

出展者として参加すれば多くの見込み客へのアピールが可能なので、来場・出展ともにぜひドリンクジャパンへの参加をご検討ください。

ドリンクジャパンの詳細は以下からご確認ください。



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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