飲料に使う水の種類とは?定義や特徴を解説

飲料水や飲料の原材料となる水には様々な種類があり、味や性質が異なります。飲料を販売する際は原材料に水の種類を表記するケースもあり、表記ルールを守らなければなりません。

本記事では、水の種類やそれぞれの定義、特徴を解説します。水の種類や特徴に興味がある方はもちろん、飲料を開発・製造する企業の方はぜひ参考にしてください。



水の種類はどう分けられる?

水の種類には様々な分類方法があり、例えば以下のような分け方の基準があります。

  • 原水を採取した水源
  • 処理方法・加工方法
  • 硬度(カルシウム、マグネシウムの含有量)
  • pH値(水素イオン濃度)
  • 含まれる成分

仮に含まれる成分が同じでも、処理方法が異なれば違う種類に分類されたり、製品に記載する表記が変わったりします。

また、ミネラルウォーターも含まれるミネラル量の違いで種類が変わったり、規定により「天然水」と表記できる水・できない水があったりするなど様々です。

なお、種類ごとの定義や特徴は、以下で詳しく解説します。



主な水の種類

飲用水や清涼飲料水の元となる原水の種類を下表にまとめました。採取場所や加工方法などの違いから、様々な種類の水が存在します。

以下で、それぞれの水の種類を詳しくみていきましょう。


水道水

水道水は、主に川や湖、ダムなどから取り入れ、浄水場を経て水道から供給される水です。水道水として提供する水は、水道法や水質基準に関する省令が示す基準を満たしていなければなりません。

水道水として供給するためには、人の健康保護の観点や、生活利用上障害が生じるなどの観点から、設定された51項目の基準を満たす必要があります。例えば以下のような基準です。

  • 重金属や化学物質などの含有量が基準以下
  • 異臭がしない
  • ほぼ無色透明

ただし、水道水は消毒に使われている塩素のにおいや、水道管内のサビから生じる金属臭・渋い味などが付く場合があります。

なお、食品の製造や調理用に水道水以外の水を使う場合は、水質検査項目の基準を満たし、定期的な水質検査の実施が必要です。


ミネラルウォーター

食品衛生法では「水のみを原料とする清涼飲料水」をミネラルウォーター類と定義しています。ミネラルウォーター類には食品衛生法、水道水には水道法が適用されます。地下水などの飲用に適した水を容器に詰めたものが、品質表示ガイドラインの示すミネラルウォーター類です。

なお、ミネラルウォーター類には、二酸化炭素を注入した水(炭酸水)や、カルシウムなどのミネラルを減らしたり、添加したりした水も含みます。

ミネラルウォーター類は、水源や処理方法で「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」「ミネラルウォーター」「ボトルドウォーター」に分けられますが、分類の詳細は後述します。


地下水

地下水は、雨が地表面から地中に浸透して、土の中の隙間部分に存在する水です。

地中を移動するなかでカルシウムやマグネシウム、ナトリウムなどのミネラル成分が溶け込み、採取する場所の地層によって成分の種類や濃度が異なります。

なお、地下水は生活用水や飲料・食品の製造にも使われている水です。成分や性質の違いから、地下水も様々な種類に分けられます。


井戸水(浅井戸水・深井戸水)

井戸水は地下水を井戸で汲み上げた水であり、「浅井戸水(あさいどすい)」と「深井戸水(ふかいどすい)」に分かれます。一般的に、浅井戸水は深さ10~30m程度にある地下水、深井戸水は水を通しにくい層より下にある地下水を汲み上げた井戸水のことをさしますが、明確な基準はありません。

井戸水は大量の雨や汚染物質の浸透で、水質が変化する場合があります。浅井戸水と比べて深井戸水のほうが地上からの影響を受けにくいですが、一度汚染されると影響が長引きます。


温泉水

温泉水(おんせんすい)は25℃以上の自噴する地下水、または温泉法第2条が規定する溶存鉱物質などの特徴がある地下水で、飲用に適した水です。

なお、温泉水が原水となっているミネラルウォーターも販売されています。温泉水の水質によって含まれる成分が違うので、ボトリングされているものを飲む際は、ラベル等でチェックしましょう。


鉱泉水

鉱泉水(こうせんすい)は25℃未満で自噴し、溶存鉱物質などの特徴がある地下水です。温泉水とは採水温度などが異なります。

鉱泉水が原水のミネラルウォーターも販売されています。


鉱水

鉱水(こうすい)は、ポンプなどで汲み上げた溶存鉱物質などの特徴がある地下水です。温泉水や鉱泉水は自噴していますが、鉱水は自噴していません。

硬水と似た名称ですが、硬水はカルシウムとマグネシウムの含有量が多い水のことで、鉱水とは意味が異なります。


湧水

湧水(ゆうすい)は自噴する地下水であり、例えば台地の崖下や丘陵の谷間などから自然に湧き出している水をさします。

湧水は、古くから人々の暮らしと関わってきたと考えられており、飲料水や農業用水などとして利用されてきました。


伏流水

伏流水(ふくりゅうすい)は、河川などの水が周辺の砂層などに浸透して流れる、地下水の1種です。地中でろ過されるため、河川の水に比べて濁りが少ない点が特徴です。

なお、伏流水は川の流れと関連する水であり、伏流水を使用する際は採水の許可を得なければなりません。


炭酸水(ソーダ水)

炭酸水は二酸化炭素(炭酸ガス)を含む水で、「ソーダ水」ともいいます。最近はそのまま飲まれることが多いですが、シロップを加えてサイダーなどを作ったり、お酒の割り材に使われたりもします。

炭酸水は口に含むとシュワシュワとした刺激があり、清涼感があります。飲用以外では汚れを落としやすくするなどの特徴もあります。

一般的に、炭酸水は「人工炭酸水」と「天然炭酸水」に分けられます。人工炭酸水はその名のとおり、人工的に炭酸ガスを注入して作られた炭酸水です。国内で製造されている炭酸水の多くは、人工炭酸水です。


海洋深層水

海洋深層水は海の深いところから採取される水で、栄養に富んでいるなどの点から水産や食品分野にも活用されています。

飲用水として利用される他、塩や調味料への利用、お酒の仕込み、水産加工品などにも利用されています。


アルカリイオン水

アルカリイオン水は、水を電解処理(電気分解)して作る水溶液「電解水」の一種です。弱アルカリ性を示し、「飲用には適せず洗浄や掃除などに使用されるもの」と「飲用に用いられるもの」に分けられます。

飲用のアルカリイオン水はボトル詰めして販売されている他、家庭用のアルカリイオン生成器からも作れます。


水素水

水素水は水素を溶け込ませた水で、近年では通販番組などで取り上げられるなど注目されています。水素が含まれていますが水素自体には味がないので、水の味への影響はありません。

また、水素水に含まれる水素について公的な基準はなく、水素が溶け込んでいる量は様々です。


純水・超純水(脱塩水・蒸留水・RO水)

純水は一般的に不純物が少ない純度の高い水のことをさし、厳密な定義はありません。多くの場合は不純物のうち、イオン類や有機物などを取り除いた水が純水と呼ばれます。なお、不純物の除去方法によって「脱塩水」「蒸留水」「RO水」などに分けられます。

純水の中でも、複数の製法を繰り返すことで、限りなく不純物を取り除き、H2Oに近づけた高純度な水を「超純水」といいます。

純水は純度の高さを活かして洗浄水や薬品類の希釈に使われる他、清涼飲料水やアルコールの原料、お茶の抽出、ソフトドリンクの原水として使われる場合もあります。



品質表示ガイドラインが定める4つのミネラルウォーター類

地下水などのうち、飲用に適した水を容器に詰めたものは「ミネラルウォーター類」として4つの種類に分かれます。

4つに分類される水を販売する際、原材料名に「水」、括弧書きで原水の種類を記載します。

それぞれの種類を詳しくみていきましょう。


ナチュラルウォーター

ナチュラルウォーターは、水質・水量が安定した地下水を供給できる単独水源から採取し、沈殿や濾過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を施されていない水です。

ナチュラルウォーターは、天然水や自然水などの表示が可能です。


ナチュラルミネラルウォーター

ナチュラルミネラルウォーターは、ナチュラルウォーターのうち「地下を移動中または地下に滞留中に地層中の無機塩類が溶解した地下水を原水とした水」のことです。

ナチュラルウォーターと同じく、天然水や自然水と表示できます。


ミネラルウォーター

ミネラルウォーターは、ナチュラルミネラルウォーターを原水としますが、処理方法が違います。ミネラルウォーターでは、品質安定などのために以下の処理が可能です。

  • ミネラルの調整
  • 曝気
  • 複数の水源から採水したナチュラルミネラルウォーターと混合
  • UV殺菌、オゾン殺菌

ミネラルウォーターと聞くと、天然水のイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし、品質表示ガイドラインの定義では、ミネラルウォーターは天然水と表示できません。

ミネラルウォーターは、沈殿やろ過、加熱殺菌以外の物理的・化学的処理をしているためです。


ボトルドウォーター(飲用水)

ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター以外の飲用水は、ボトルドウォーター(飲用水)に分類されます。

食品衛生法上の基準を満たしているという条件の他は、水源や処理方法の条件がないため、水道水をそのままボトルに詰めただけでもボトルドウォーターに該当します。

水道事業者が水質をPRする目的で、水道水をボトルに詰めたボトルドウォーターを配布・販売するケースもあります。



水の選び方は?

ここまで紹介してきたように、水には様々な種類があり特徴が異なります。飲料を作る際は水の性質や成分に注目し、用途に合う水を選びましょう。

以下では、水の硬度、水のpH値、水に含まれる成分から、選び方のポイントを紹介します。


①水の硬度|軟水・硬水

水の種類を分ける要素には、採取した水源や処理方法の他に「硬度」があります。

水の硬度とは、水中のカルシウムイオンとマグネシウムイオンの合計量を炭酸カルシウムに換算して示した数値です。なお、硬度が高い水を「硬水」、低い水を「軟水」と呼びます。

軟水と硬水を分ける基準は様々ですが、WHOの基準では、炭酸カルシウムの含有量が60mg/L未満の水を軟水、120~180mg/Lの水を硬水としています。

日本の水道水はほとんどが軟水(平均硬度44mg/L)であるため、日本人は軟水になじみがあるでしょう。

水の硬度は専用の測定器で測る他、水道水ならば水道局のホームページ等でも確認できることがあります。市販の水の場合は、商品のパッケージに記載されていることが多いので確認してみてください。


軟水の特徴

軟水は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンの含有量が少ないためクセがなく、日本人になじみのある水です。日本の食文化は軟水が一般的な環境下で発展したため、和食に合う水であり、素材の味を邪魔しません。お酒の割り材にも使いやすい水です。

なお、軟水をお酒の仕込み水に使うと繊細で柔らかい味を出しやすいとされています。お茶を淹れる際に使うと成分がほどよく抽出でき、お茶の美味しさが引き立ちます。


硬水の特徴

硬水は軟水よりもカルシウムイオンやマグネシウムイオンを多く含みます。ミネラルを摂取できますが味にクセを感じやすく、ミネラル分による苦味やえぐみを感じて飲みづらく感じる方もいるかもしれません。

素材の味を活かす料理には不向きですが、ミネラル分が食材の臭みを消したり、煮込んだ肉を柔らかくしたりする効果が得られます。

お酒の仕込み水に使うと、力強い独特な味わいを作りやすい点は硬水の特徴です。硬度の高い水で淹れたお茶はお茶の味があまり抽出されず、色にも影響を与えます。


②水のpH値|酸性・中性・アルカリ性

pH値とは水溶液中の水素イオン濃度をさし、酸性・アルカリ性の度合いを示す数値です。0~14まであり、中間のpH7を中性として、中性よりpH値が低いと酸性、高いとアルカリ性に分類します。

酸性・中性・アルカリ性を分類するpH値の範囲は、法令や検査指針により多少異なりますが、食品添加物公定書の分類は以下のとおりです。

また、日本の水道水質基準値はpH5.8〜8.6までとされ、水道水は微酸性から微アルカリ性程度のpH値にあたります。地域により実際の水道から出てくる水のpH値は異なりますが、中性となるpH7付近の水が望ましいとされています。

pH値は指示薬や電極などで測定でき、専用の測定器もあります。

お茶を淹れる際は中性の水が適しており、色や味がバランス良く抽出できます。酸性の水では色が薄くなり、アルカリ性の水では赤黒い色を帯びた濃い色のお茶に仕上がります。

酸性の水は、ゆで卵を茹でる際に使うと殻がむきやすくなる他、麺類を茹でる時に使うとコシが強くなる効果がある点が特徴です。

また、アルカリイオン水などはpH9.0~10.0程度の弱アルカリ性を示し、消化不良や下痢などを改善する効果が期待できます。しかし、強アルカリ性の水は刺激が強く、飲用には向きません。


③水に含まれる成分

水の硬度を示す際に指標となるカルシウムイオンやマグネシウムイオンの他にも、水は以下のような様々な成分を含みます。含まれる成分の割合は水の味に影響を与えるとの研究結果もあり、おいしさを決める上でも重要です。

  • カルシウム
  • マグネシウム
  • ナトリウム
  • カリウム
  • マンガン
  • シリカ(ケイ素)
  • バナジウム

カルシウムやマグネシウム、ナトリウム、カリウムなどの成分をバランス良く含んだ水はまろやかで飲みやすくなります。一方、マグネシウムだけが多い、鉄やマンガンなどの成分が多いなどの場合は、渋みや苦味が感じられることもあります。

なお、ミネラルは人体に必要な成分であり、不足すると体調不良を引き起こします。

ミネラルウォーター類のなかにはシリカ(ケイ素)やバナジウムなどを多く含む商品があり、成分の有効性をうたっています。シリカも身体に必要なミネラルのひとつであり、美容や健康に効果があるといわれる成分です。



飲料の開発・製造に関する情報収集なら「ドリンクジャパン」へ

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 2024年11月20日(水)~22日(金)



水の種類を理解して飲料の開発・製造に役立てよう

飲用水には様々な種類・定義が存在しており、ミネラルウォーターなどを販売する際はガイドラインに従った表示が必要です。原材料に使用する水の性質は味わいに影響を与えるため、飲料を作る際は特徴を理解して選びましょう。

また、飲食品製造に水道水以外の水を使う場合は、所定の水質基準を満たす水でなければなりません。

様々なルールがあるため、飲料を開発・製造する際は、水の種類への理解も必要です。飲料業界の最新トレンドやより詳しい情報を知りたい場合は、ぜひドリンクジャパンへの参加をご検討ください。



▶監修:山中 亜希(やまなか あき)

アクアソムリエ

2004年、ミネラルウォーター専門店「AQUA STORE」の立ち上げと同時にイタリアにてアクアソムリエの資格を取得。2008年より、アクアソムリエを養成するミネラルウォーターの専門スクール「AQUADEMIA」を開校し、校長に就任するとともに、「AQUA STORE」のディレクターとしても活動。ミネラルウォーターの正しい知識・情報の普及のために、セミナーや講演、企業へのコンサルティング業務などを行っており、海外からもセミナーの講師として招聘されている。

※監修者は「水に関する知識」についてのみ監修を行っており、掲載している展示会の選定には関わっておりません。



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