ペットボトルリサイクルの現状は?企業の取り組み事例やこれからの課題を解説

ペットボトルは正しく分別、回収、リサイクルすることで、新たな製品に生まれ変わり、貴重な資源として循環し続けます。日本のリサイクル率は世界トップクラスを誇りますが、さらなる向上の余地があるのも事実です。

本記事では、ペットボトルリサイクルの現状や今後の動向、市町村による分別、回収から再商品化までの具体的な流れを詳しく解説します。

また、関連する法律やガイドライン、大手企業の先進的な取り組み事例、異物混入や回収コストなど現在直面している課題、具体的な対策も紹介します。

ペットボトルリサイクルの基本知識や最新情報を知りたい人はぜひ参考にしてください。




ペットボトルリサイクルの現状とこれからの動向

日本のペットボトルリサイクル率は2023年度で85%に達しており、世界でもトップクラスの水準を誇っています。欧州の42.7%、米国の19.6%と比較すると、日本が高いリサイクル率を実現していることがわかるでしょう

また、使用済みペットボトルを再資源として利用する有効利用率が98.6%と、ほぼ全てのペットボトルが廃棄されることなく新たな資源として生まれ変わっています

2023年ペットボトルリサイクルの目標と達成状況

2023年度のリサイクル量は541千トンに及びました。一方、リサイクルされなかった量は合計95千トンで、内訳はリサイクル工程で発生する残渣が48千トン、可燃ごみ・不燃ごみが48千トンです。

このうち、熱回収された量は残渣由来が41千トン、可燃ごみ・不燃ごみ由来が45千トンで、合計86千トンと推定されます

今後は3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進を軸に、さらなる環境負荷の低減を目指す動きが加速していきます。

特に、水平リサイクル(ボトルtoボトル)の比率向上や、有効利用率100%の達成に向けた取り組みが業界全体で進められる見込みです。



ペットボトルリサイクルの流れ

ペットボトルリサイクルは、消費者による分別排出から始まり、複数の工程を経て新たな製品へと生まれ変わります。

  • 市町村による分別、回収
  • 事業者による再商品化工程
  • 他の商品へのリサイクル

この一連の流れは、効率的なリサイクルシステムを構築する上で重要な役割を果たしています。

各工程で適切な処理が行われることで、高品質な再生資源としての活用が可能になるでしょう。以下で詳しく解説します。


市町村による分別、回収

市町村では、住民が分別排出したペットボトルを指定場所で回収し、選別工場へ運搬します。

工場では、回収された資源からペットボトルとそれ以外の異物を分ける選別作業が実施されるのが一般的です。選別後のペットボトルは、輸送効率を高めるために圧縮してベール(圧縮梱包)化されます。

圧縮されたペットボトルは、リサイクル事業者に引き取られるまで適切に保管され、次の工程に送られる仕組みです。


事業者による再商品化工程

リサイクル工場では、回収されたペットボトルを再生原料へと加工する作業が行われます。この工程は、以下の流れで進められるのが特徴です。

  • ベールをほぐす
  • 色のついたボトルを取り除く(着色ボトル除去)
  • 人の手で異物を選別する
  • 粉砕・洗浄・微細異物を除去する

上記の工程を経て、フレークと呼ばれる小さなチップ状の再生原料が完成します。フレークは高品質な再生原料として、様々な製品の原材料として活用されます。


他の商品へのリサイクル

フレークは、様々な製品に生まれ変わります。代表的な製品は以下のとおりです。

  • 新しいペットボトル(ボトルtoボトル・水平リサイクル)
  • 商品トレイ
  • 卵パック
  • 衣服
  • 包装フィルム
  • ラベル

現在、新しいペットボトルに生まれ変わるボトルtoボトル(水平リサイクル)は約30%、その他の製品へのカスケードリサイクルが約70%という比率です

ボトルtoボトルは、資源の有効利用やCO2(二酸化炭素)排出抑制の観点から優れているため、今後は50%を超えることを目標に掲げています。環境負荷の低減には、水平リサイクルの拡大が重要です



ペットボトルリサイクルに関連する法律・ガイドライン・指針

ペットボトルリサイクルを適切に推進するためには、関連する法律やガイドライン、指針を把握しておくことが重要です。

主要な法規制やガイドライン、指針は以下のとおりです。

  • 改正容器包装リサイクル法
  • PETボトル自主設計ガイドライン
  • PETボトルの環境配慮設計指針

それぞれの内容を理解することで、より効果的なリサイクル活動につながるでしょう。


改正容器包装リサイクル法

1995年に容器包装リサイクル法が制定され、1997年にびん、缶などと同時に施行されました。その後、10年を経て見直しが行われ、現在は2008年に完全施行された改正容器包装リサイクル法が適用されています。

現行の容器包装リサイクル法の概要

この法律では、消費者・市町村・事業者それぞれの役割を明確に規定し、効率的なリサイクルシステムの構築を目指しています。改正法では、ペットボトルに関し、廃ペットボトルの輸出抑制や、再商品化への合理化寄与分として事業者から市町村へ資金を供出する仕組みなどが盛り込まれました。

また、法律の見直し期間が10年から5年に短縮され、社会変化のスピードに対応した柔軟な法改正が可能となり、より実効性の高いリサイクル制度の実現が期待されています。


PETボトル自主設計ガイドライン

ペットボトルリサイクルを効率的に推進するためには、リサイクルしやすいペットボトルの設計・製造が不可欠です。この観点から策定されたのがPETボトル自主設計ガイドラインです。

本ガイドラインでは、ペットボトル本体には単一素材を使用し、個別着色を避けることを原則基準として定めています。さらに、ラベルやキャップも、リサイクル工程で分離しやすい材質や接着方法を採用するよう推奨されているのが特徴です。

PETボトル自主設計ガイドラインの原則基準

ガイドライン制定以降、国内のペットボトルは透明で単一素材のものが主流となり、リサイクル率の向上に大きく貢献しています。


PETボトルの環境配慮設計指針

PETボトル自主設計ガイドラインがリサイクルに特化していたのに対し、より包括的な3R(リデュース・リユース・リサイクル)を推進するために策定されたのが「PETボトルの環境配慮設計指針」です。環境負荷の総合的な低減を目指した内容となっています。

この指針では、ペットボトルの軽量化や簡素化などの配慮事項と、再生PET樹脂やバイオマスプラスチックの使用など材料規定が定められました。特に軽量化については、各メーカーの技術革新により目標を達成し、資源使用量の削減に成功しています。

PETボトルの環境配慮設計指針の概要(一部)

これらの取り組みにより、ペットボトルの樹脂削減効果量は237千トンとなり、2004年と比較して28.4%の軽量化を達成しました。



ペットボトルリサイクルの取り組み事例

各企業では独自のペットボトルリサイクルの取り組みを積極的に展開しています。

例えば、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社では、ペットボトルtoペットボトルの推進に注力し、提携先から回収した使用済みペットボトルを自社製品に再生する仕組みを構築しました。大規模オフィスビルを管理する不動産企業と協働し、ビル内で回収したペットボトルを再びペットボトルへリサイクルする循環システムを実現しています※1※2

他にも、サントリーホールディングス株式会社は2012年にリサイクルペットボトルを導入し、独自の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発しました。この技術により、再生原料のフレークを高温で溶解・ろ過後、直接プリフォームを製造し、従来の化石由来原料と比較してCO2の排出を約70%削減しています※3

両社の取り組みは、業界全体の水平リサイクル推進の先進事例として注目されています。



ペットボトルリサイクルの課題

前述のとおり、日本のペットボトルリサイクル率は高い水準を維持していますが、さらなる向上を目指す上でいくつかの課題が存在します。現状では、主な課題として以下の3点が挙げられます。

  • 回収コストがかかる
  • リサイクルボックスにペットボトル以外の異物が混ざる
  • 可燃ごみ・不燃ごみへの混入やポイ捨てがある

それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。


回収コストがかかる

ペットボトルリサイクルにおける大きな課題のひとつが、回収に伴うコストの問題です。回収車による輸送費用に加え、選別作業に必要な人件費など、様々なコストが発生します。

他にも注目すべき点として、自治体間でコストに大きなばらつきがある点が挙げられます。ペットボトルを瓶や缶などと混在させて回収車に積み込む自治体では、後工程での選別作業が増えるため、コストが高くなりやすい傾向です。一方、ペットボトルのみを分別して積み込む方式を採用している自治体では、効率的な回収が可能となります。

このような状況を改善するには、ペットボトル専用の車両積み込みを推進し、回収効率を高めることが重要です。


リサイクルボックスにペットボトル以外の異物が混ざる

ペットボトル専用のリサイクルボックスに、たばこの吸い殻や家庭ごみなどの異物が投入される問題が深刻化しています。

不適切な投棄により、選別作業に余計な人件費がかかるだけでなく、汚染がひどい場合にはリサイクル自体が不可能になってしまうケースもあります。

異物の混入は、リサイクルの品質低下や処理コストの増加を招き、効率的な資源循環を妨げる要因となっているのが現状です。


可燃ごみ・不燃ごみへの混入やポイ捨てがある

再生リサイクルとして分別されずに、可燃ごみや不燃ごみとして捨てられたペットボトルの混入量は年間48千トンにも及んでいます

さらに深刻なのは、ポイ捨てによる環境への影響です。道路や公園に捨てられたペットボトルは、雨水などにより川や海へ流れ込み、海洋プラスチック問題の一因となっています。

これらの問題を解決するには、消費者の意識向上と分別の徹底が不可欠です。適切な分別により、資源の有効活用と環境負荷の低減を同時に実現することが求められています。



ペットボトルリサイクルを推進するために企業ができること

ペットボトルリサイクルの課題解決には、企業の積極的な取り組みが欠かせません。消費者や自治体だけでなく、企業が主体的に行動することで、より効果的なリサイクルシステムの構築が可能です。

企業が実践できる具体的な取り組みは、以下のとおりです。

  • リサイクルボックスを設置する
  • ペットボトル to ペットボトル(水平リサイクル)を推進する

これらの取り組みを詳しく解説していきます。


リサイクルボックスを設置する

ペットボトルを正しくリサイクルするには、ペットボトル単体で回収できる専用のリサイクルボックスを設置することが有効です。

企業では、自社内の自動販売機の横にリサイクルボックスを設置するなど、身近なところから対策をはじめられるでしょう。専用ボックスの設置により、キャップ、ラベルをはずしてボトルのみを回収することで、異物の混入を防ぎ、高品質なリサイクルが可能です。


ペットボトル to ペットボトル(水平リサイクル)を推進する

ペットボトルから新しいペットボトルへとリサイクルする「ペットボトルtoペットボトル」(水平リサイクル)は、資源を無駄なく循環させる効率的なリサイクル方法です。水平リサイクルは、繰り返し資源を活用できる点で優れています。

現在、リサイクル全体のうち約33%がペットボトルに生まれ変わっており、さらなる拡大の余地があるでしょう

ただし、水平リサイクルを成功させるには、回収段階で異物が混入しないことが極めて重要です。前述のとおり、異物混入は分別するために人件費が増加するだけでなく、再生リサイクル自体が不可能になってしまうおそれがあります。

企業には、回収ボックスへの異物混入を防ぐ工夫が求められています。例えば、投入口の形状を工夫したり、分かりやすい表示を設けたりすることで、適切な分別の促進につながるでしょう。

リサイクルボックスの表示例



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■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



ペットボトルリサイクルを進めてSDGsに貢献しよう

日本のペットボトルリサイクル率は世界トップクラスを誇り、軽量化などの技術革新も順調に進んでいます。しかし、リサイクルボックスへの異物混入といった課題も残されており、リサイクル率をさらに上げるには様々な工夫が必要です。

企業としては、リサイクルボックスの設置やペットボトルtoペットボトルの推進など、具体的な取り組みを進めることでSDGsの達成に貢献し、循環型社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

ペットボトルリサイクルを推進したいなら、最新技術や業界動向を効率的に収集できる「ドリンクジャパン」へのご参加がおすすめです。持続可能な社会の実現に向けて、ぜひこの機会にご参加ください。

■ドリンクジャパン 2025
 会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
 会場:幕張メッセ



▶監修:近藤 元博(こんどう もとひろ)

愛知工業大学 総合技術研究所 教授

プロフィール:1987年トヨタ自動車に入社。分散型エネルギーシステム、高効率エネルギーシステムの開発、導入を推進。「リサイクル技術開発本多賞」「化学工学会技術賞」「市村地球環境産業賞」他 資源循環、エネルギーシステムに関する表彰受賞。
その後、経営企画、事業企画等に従事し、技術経営、サプライチェーンマネージメント及び事業継続マネジメント等を推進。
2020年から現職。産学連携、地域連携を通じて環境経営支援、資源エネルギー技術開発等など社会実証に取組中。経済産業省総合資源エネルギー調査会 資源・燃料分科会 脱炭素燃料政策小委員会 内閣府国土強靭化推進会議 委員他



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