プレバイオティクスとは?飲料をはじめとする効果的な摂り方や健康効果を解説
プレバイオティクスには腸内環境を整える効果があり、プロバイオティクスとの同時摂取により、さらなる腸内環境の改善が期待できるとして注目されています。近年では、健康志向の高まりから、国内外でプレバイオティクスを活用した商品の開発が進んでいます。
本記事では、プレバイオティクスの定義や健康効果、種類、具体的な食材・飲料・食品を紹介します。プレバイオティクスを活用して商品開発を行っている企業の事例も紹介するため、商品開発や市場参入を検討している企業の方は参考にしてください。
プレバイオティクスの定義とは?
プレバイオティクスは、「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」と定義されています。簡潔に表すと、腸内の善玉菌を増やすエサになる成分のことです。
代表的なプレバイオティクスには、オリゴ糖や食物繊維などがあります。
プロバイオティクスとの違い
プロバイオティクスは「腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に有益に働く生きた微生物」と定義されています。
腸内フローラの正式名称は、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)で、腸の壁に塊となって張り付いている状態がお花畑のように見えることから名付けられています。
乳酸菌飲料やビフィズス菌を含むヨーグルトは、手軽にプロバイオティクスを摂取できる代表的な食品です。
プロバイオティクスが菌の作用によって腸内環境を改善する微生物をさすのに対し、プレバイオティクスはプロバイオティクスをはじめとする有用な腸内細菌のエサとなる成分をさす点で異なります。
シンバイオティクスとの違い
シンバイオティクスとは、プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせたものをさします。
例えば、乳酸菌飲料にはプロバイオティクスである乳酸菌が含まれており、オリゴ糖はそれらの菌のエサになります。そのため、ヨーグルトにオリゴ糖を加えたものはシンバイオティクスです。
腸内フローラの状態を整える菌であるプロバイオティクスと、腸内の有用な菌のエサになるプレバイオティクスを同時に摂取することで、より効果的に腸内環境の改善が期待できます。
参考:https://www.danone-institute.or.jp/mailmagazine/4487/
└双方を組み合わせたシンバイオティクス
プレバイオティクスとして認められる条件
プレバイオティクスは、大腸内にある特定の細菌の増殖や活性を助け、宿主に有益な影響を与えます。公益財団法人腸内細菌学会で定められている、プレバイオティクスに要求される具体的な条件は以下のとおりです。
- 消化管上部で加水分解、吸収されない
- 大腸に共生する一種または限定された数の有益な細菌(ビフィズス菌など)の選択的な基質であり、それらの細菌の増殖を促進し、または代謝を活性化する
- 大腸の腸内細菌叢(フローラ)を健康的な構成に都合の良いように改変できる
- 宿主の健康に有益な全身的な効果を誘導する
プロバイオティクスとして認められる条件
乳酸菌やビフィズス菌はプロバイオティクスの代表例です。
プロバイオティクスと認められるのは、以下の条件を満たす特定の菌株(ひとつの細菌から分裂増殖した菌の集まり)のみです。
- 安全性が保証されている
- もともと宿主の腸内フローラの一員である
- 胃液、胆汁などに耐えて生きたまま腸に到達できる
- 下部消化管で増殖可能である
- 宿主に対して明らかな有用効果を発揮できる
- 食品などの形態で有効な菌数が維持できる
- 安価かつ容易に取り扱える
プレバイオティクスを摂取することで得られる健康効果
プレバイオティクスを摂取することで期待できる主な健康効果は以下のとおりです。
- 整腸作用(便通改善)
- 抗脂血作用
- コレステロール低下作用
- インスリン抵抗性の改善
- ミネラル吸収促進作用
- 尿中窒素低減作用
- 大腸がん・炎症性腸疾患の予防・改善
- アレルギー抑制作用
- 腸管免疫の増強
これらの効果は、いずれも直接的ではなく、善玉菌による腸内フローラの改善を通じて間接的にもたらされます。
そのため、効率的に善玉菌を増やすプロバイオティクスと、善玉菌のエサになるプレバイオティクスを同時摂取する「シンバイオティクス」はより有効とされています。
プレバイオティクスの主な種類は?
プレバイオティクスの主な種類はオリゴ糖と食物繊維です。
- オリゴ糖を含むもの
- 食物繊維を含むもの
それぞれを含む食品の具体例を紹介します。
オリゴ糖を含むもの
オリゴ糖は、ブドウ糖や果糖などの単糖が2〜10個ほど結合してできるものの総称です。主な種類は以下のとおりです。
- イソマルトオリゴ糖(IMO)
- フラクトオリゴ糖(FOS)
- ガラクトオリゴ糖(GOS)
- キシロオリゴ糖(XOS)
この他にも、大豆オリゴ糖や乳果オリゴ糖などがあり、様々な食品に含まれています。
なお、消化酵素で消化できる糖は「可消化性」、できない糖は「難消化性」と呼ばれ、一部の難消化性オリゴ糖が腸内細菌によって利用されます。
特にビフィズス菌は多様な種類のオリゴ糖を利用できる腸内細菌です。上記の4つは小腸で消化されず、大腸でビフィズス菌のエサになりやすいとされています。
オリゴ糖は商品として販売されている他、オリゴ糖を含む食材もあります。主な食材は以下のとおりです。
- 野菜類(玉ねぎ、ごぼう、ねぎ、にんにく、アスパラガスなど)
- バナナ
- りんご
- 大豆
- 清酒
- みりん
- 味噌
清酒・みりん・味噌にもオリゴ糖は微量ながら含まれており、和食との親和性が高いです。
食物繊維を含むもの
食物繊維は「ヒトの消化酵素で分解されない食物中の総体」と定義されており、水に溶ける「水溶性食物繊維」と、水に溶けない「不溶性食物繊維」に分けられます。
健康効果を得るためには、1日あたり25g以上の摂取が理想的とされています。食物繊維を多く含む主な食品の例は以下のとおりです。
手軽に取り入れやすい食品が多いため、日々の食事に活用して、腸内環境の改善を目指しましょう。
シンバイオティクスにおすすめの飲料・食品の具体例
前述のとおり、腸内フローラの改善にはプレバイオティクス(エサ)とプロバイオティクス(菌)を同時に摂取するシンバイオティクスが効果的です。
例えば、以下の組み合わせは相性がよく食べやすいでしょう。
- ヨーグルト(ビフィズス菌)+オリゴ糖
- 乳酸菌飲料+バナナ
- 味噌汁+玉ねぎ・豆腐
- 納豆+ねぎ・オクラ
いずれも朝食などに取り入れやすく、日常的に続けやすい点がメリットです。
自分の好みにあわせて、プロバイオティクスとプレバイオティクスの組み合わせを楽しみましょう。
プレバイオティクスを含む飲料食品の事例や健康食品市場の見通し
プレバイオティクスのひとつであるフラクトオリゴ糖を含む商品は、おなかの調子を整える整腸機能をうたった特定保健用食品(トクホ)の第一号として許可されたものです。
フラクトオリゴ糖は味質がショ糖に近く、砂糖の代替品として注目を集めており、国内ではスムージーをはじめとする飲料の開発・販売に用いられています。大手飲料メーカーからは、飲料や料理に混ぜて使用するシロップタイプのフラクトオリゴ糖が販売されています。
近年は高齢化や感染症への関心が高まっており、それにともなって健康食品へのニーズも増加傾向です。健康食品の市場規模はメーカー出荷金額ベースで拡大し続けており、2024年度は9,000億円弱に達する見込みです。2023年度と比べるとやや減少しましたが、コロナ禍以前よりも高い水準を維持しています。
健康食品の需要拡大は国内外で見られ、プレバイオティクスを含む炭酸飲料市場は海外でも急成長を遂げています。世界的に知名度の高いコカ・コーラやペプシコもプレバイオティクス飲料市場に参入しました。
市場動向や世界的な流行をふまえると、今後もプレバイオティクスを含む新商品の需要が高まることが予想されるでしょう。
プレバイオティクス飲料の開発や情報収集に興味があるなら「ドリンクジャパン」へ
プレバイオティクスを含む飲料の開発・販売に興味があるなら、ぜひ「ドリンクジャパン」にご来場ください。「ドリンクジャパン」とは、飲料・液状食品に関する開発・製造に特化した展示会です。飲料・酒類・液状食品の商品開発、製造、検査に関する最新技術が出展し、関連メーカーが製品導入・比較検討のために世界中から来場します。
プレバイオティクス飲料は一般的な商品とは異なるため、開発に必要な情報の収集に困っている方もいるのではないでしょうか。会場で行われるセミナーでは他社事例や最新の業界トレンドなどの動向も知ることが可能です。
例えば、過去のセミナーでは、機能性表示食品のひとつである「ヤクルト1000」の商品開発の話が行われたこともあります。プレバイオティクス飲料や機能性食品素材に関連する商材や原材料の比較検討もできるため、ぜひこの機会にご来場ください。展示会へは、事前登録をすれば無料で入場可能です。
また、関連素材を取り扱う企業は、ぜひ出展をご検討ください。商品開発を目的に、全国から原料・素材を探しに飲料メーカーが来場します。また、ドリンクジャパンには原料・素材にフォーカスした「原料・素材ゾーン」が特設されているため、認知向上やビジネス拡大につながる可能性があります。
■ドリンクジャパン 2025
会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
会場:幕張メッセ
プレバイオティクスは健康志向の高まりから商品開発も進んでいる
プレバイオティクスとは「大腸の特定の細菌を増殖させることなどにより、宿主に有益に働く食品成分」です。直接腸内環境を改善する菌であるプロバイオティクスのエサになることで、腸内環境を改善する役割があります。
近年は健康志向が高まっており、プレバイオティクスやプロバイオティクス、両方を組み合わせたシンバイオティクスが注目されています。
プレバイオティクスのひとつであるフラクトオリゴ糖は溶けやすいため、粉末ドリンクにも使いやすく、商品の開発に活用されています。国内外で飲料メーカーが参入するなど、市場も拡大していく見込みです。
プレバイオティクスを活用した商品開発や市場参入を検討しているなら、ぜひ「ドリンクジャパン」にご来場ください。展示会では、プレバイオティクス飲料の原材料の比較検討や、飲料業界に関するトレンドや情報収集が可能です。
会場には大手飲料メーカーから地場の飲料メーカーまで全国から来場するため、自社製品の認知度向上や商談獲得の機会にもご活用いただけます。
来場側、出展側の双方にメリットがあるため、ぜひこの機会にご来場ください。
■ドリンクジャパン 2025
会期:2025年12月3日(水)~5日(金)
会場:幕張メッセ
参考:https://www.alic.go.jp/content/001224394.pdf
└(1)“べたつかない”のに“溶けやすい”物性面での進化
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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