商品開発におけるAIの活用方法とは?導入のメリット・注意点や企業事例を紹介
AIは様々な業界や用途で活用されている技術であり、商品開発の分野でも導入する企業が増えています。
本記事では、商品開発に導入されているAIの活用方法、導入するメリットや注意点を紹介します。
実際にAIを活用している企業事例も紹介するので、商品開発にAIの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
商品開発で活用されているAIの概要と注目されている背景
AI(人工知能)とは、人間のように学習や判断、推論などの能力をコンピューターで再現するための技術をさします。近年の技術革新により、AIの活用シーンは多様化し、より身近な存在となりました。例えば、スマートフォンの音声アシスタント、インターネットの検索予測、チャットボット、さらには自動運転車や医療診断の補助など、あらゆる場面で活用されています。
さらに、学習したデータを活用して新しいコンテンツを作成する「生成AI」の登場により、商品開発を含む様々な業務に活用され、市場は年々拡大しています。
商品開発に活用できるAIの種類や概要、活用例は以下のとおりです。
AIは、人が行っている業務を代替する、人が携われなかった業務を担う、新規業務・事業を創出するなど、過去の技術革新とは異なる可能性を秘めていることから注目を浴びています。
商品開発にAIを活用する方法
商品開発にAIを活用する具体的な方法は以下のとおりです。
● 品質管理や工程管理
● レシピ案・配合設計
● マーケティング全般
● パッケージデザイン作成
● コンテンツ制作
それぞれ詳しく紹介します。
品質管理や工程管理
AIによる品質管理では、画像認識やセンサー情報の活用により、製品の外観や重量、成分などの検査を自動で行うことが可能です。人による確認作業でのばらつきをなくし、品質の均一化が実現可能です。
工程管理では、AIを導入することで不良率の予測や異常検知が可能になり、トラブルを未然に防ぐ体制が構築しやすくなります。
さらに、データ分析を組み合わせることで、商品開発から製造までの一連の流れを最適化することも期待できます。
レシピ案・配合設計
AIを活用することで、味の分析や栄養バランス、市場ニーズなどを加味した初期レシピの構成(食材の組み合わせ・配合比率)の提案が可能です。
AIで作成したレシピ配合案をもとに、試作・試食による実地検証を行うことで、仮説検証のサイクルを短縮できます。評価結果をAIにフィードバックすると、新たなレシピ提案の精度をより高めていけるでしょう。
マーケティング全般
AIはマーケティング全般(企画作成・市場分析・需要予測・広告戦略など)に活用できる技術です。
例えば、AIは膨大なデータをもとにトレンドやユーザーニーズを分析し、新商品の企画作成に役立ちます。具体的には、SNSの投稿やレビューサイト、検索キーワードなどから消費者の興味・関心を抽出し、どのような商品コンセプトが受け入れられやすいかを深掘りする際に便利です。
人間の直感や経験に頼らず、データにもとづいた意思決定ができるようになり、開発リスクの軽減や企画精度の向上が期待できます。
大手飲料企業でも、商品開発の企画作成にAIを導入するテストを行っています。その他、顧客の購買履歴や行動データをもとに、パーソナライズされた広告配信、キャンペーンの効果予測や反応率の分析をリアルタイムで行うことも可能です。
集めたデータを活用し、最適なプロモーションのタイミングやチャネルの選定などを行えます。
パッケージデザイン作成
AIは視認性や配色、文字のバランスなどの視覚的要素を分析し、より購買意欲を高めるデザインの提案が可能です。
AIが作成したデザインをもとに、デザイナーが改良して販売している飲料メーカーもあります。AIの分析力とデザイナーの感性を組み合わせることで、競争力のあるパッケージデザインを効率的に開発できるかもしれません。
また、パッケージデザイン専用の生成AIサービスも登場しており、導入する企業は徐々に増えつつあります。
コンテンツ制作
生成AIを活用して画像や動画、音楽を作成することも可能です。これらのコンテンツは、広告や商品紹介など、さまざまな場面で活用されています。
実際に、飲料メーカーや商業施設、ゲーム開発企業などでCMが広告制作、ゲーム開発に活用している事例があります。詳細は後述するので参考にしてください。
商品開発にAIを活用している飲料業界の事例
商品開発にAIを活用している企業は複数あります。以下はその一例です。
● アサヒ飲料株式会社
● 株式会社伊藤園
● 日本コカ・コーラ
どのように活用しているのか、具体的な内容を紹介します。
アサヒ飲料株式会社
アサヒ飲料株式会社は、AIを活用した微生物迅速検査法「FLOX-AI」を独自開発し、活用しています。飲料業界の微生物検査にはじめてAIを導入した事例です。
従来、飲料業界では「通常培養法」と検査装置を使った「迅速検査法」の2つにより、微生物検査が行われていました。前者は微生物の有無の判定に約3〜5日かかる上、人の目視での確認も必要な検査です。後者は微生物の有無の判定は1日程度で完了するものの、導入・運用コストが高い課題を抱えていました。
「FLOX-AI」を開発したことで、迅速検査法と比較して70%〜85%のコスト削減と、年間180時間の作業時間の短縮に成功しています。
株式会社伊藤園
株式会社伊藤園は、AIで生成したAIタレントを起用し、テレビCMを放送しています。AIタレントは伊藤園専属のオリジナルタレントで、ブランディングやプロモーションの最適化などを実現するAI model社が提供するサービスを採用しています。
また、「お〜いお茶 カテキン緑茶」のパッケージデザインも、ブランドの視認性を最大限に引き出すため、AIが生成したデザインを参考にして作られたものです。製品の「おいしさ」をより表現しつつ、「お〜いお茶」の健康効果をAIタレントの変化で表現するなど、生成AIをプロモーションで有効に活用しています。
日本コカ・コーラ
日本コカ・コーラは自社のコーヒーブランド「ジョージア」と生成AIを活用した体験型コンテンツを提供しています。
第一弾として提供された「AIイラストメーカー」は、ユーザーが撮影した写真をイラストレータータッチに変換してくれるサービスです。イラスト生成総数は134万回を突破しています。
第二弾として提供された「AIソングメーカー」は、アップロードした写真をもとに歌詞とメロディが生成され、テーマソングが完成するサービスです。
生成AIを活用した取り組みを通じて、ユーザーとの新たな接点を創出し、ブランドの魅力を効果的に伝えています。
商品開発でAIを導入・活用する際のメリット
商品開発でAIを導入・活用する際のメリットは以下のとおりです。
● 新商品・サービスの開発や新しいニーズの発見が期待できる
● 生産性・品質の向上やコスト削減が期待できる
● 人間にはないクリエイティブな発想が期待できる
それぞれ詳しく解説します。
新商品・サービスの開発や新しいニーズの発見が期待できる
AIは膨大なデータを分析し、見つけにくかった消費者の潜在ニーズや市場の隙間を発見することに役立ちます。そのため、インターネット上にある膨大なデータをもとに、今後伸びそうな分野や新たなターゲット層の特定が可能です。
直感や過去の経験だけに頼らない、客観的かつ精度の高い商品・サービスの開発が期待できます。
生産性・品質の向上やコスト削減が期待できる
AIの導入により、業務プロセスの最適化や自動化が進み、商品開発のスピードや生産効率の向上が期待できます。
例えば、品質検査にAIを活用することで、人間では見落としやすい微細な不良も正確に検出でき、トラブルや手戻りを防げるでしょう。
手作業にかかる工数の削減や省人化を行いつつ、高品質な商品の継続的な提供が可能です。結果的に、コスト削減と利益率の向上に貢献します。
人間にはないクリエイティブな発想が期待できる
AIは膨大なデータを組み合わせて学習するため、人間では思いつかない素材の組み合わせやクリエイティブな商品を提案することがあります。
異業種のトレンド情報をもとに、全く新しい価値を持つ商品を生み出したり、複雑な条件下で斬新な解決策を導き出したりするなどの成果が期待でき、革新的な商品開発が行える可能性を秘めている技術です。
商品開発でAI導入・活用する際の注意点
商品開発でAIを導入・活用する際には、以下の点に注意しましょう。
● 初期費用がかかる
● 長期的な運用とAIに詳しい人材が必要になる
● 雇用に影響を与える可能性がある
● 必ず成功するとは限らない
● 判断の根拠や責任の所在が不明瞭になる
● セキュリティリスクを伴う
それぞれ詳しく解説します。
初期費用がかかる
AIの導入には、ソフトウェアやハードウェアの購入、インフラ整備、システム構築などの初期投資が必要な場合があります。導入後の運用にも保守費用や外部ベンダーへの委託料などが発生し、コストが増大する可能性もあります。
そのため、資金や商品開発にかけられる予算に限りがある企業にとっては、導入のハードルが高く感じられることもあるでしょう。
長期的な運用とAIに詳しい人材が必要になる
AIは導入して終わりではなく、継続的な運用・改善が必要です。特にデータを必要とする業務にAIを活用する場合、短期的に成果を出すことは難しいかもしれません。
また、一度導入してもデータや環境の変化に応じた調整が必要となります。長期的に対応できる体制づくりやAIに関する専門知識を持つ人材の確保・育成が不可欠です。
雇用に影響を与える可能性がある
AIの導入によって業務の効率化が進む一方、人手を必要としない工程が増えると、一部の業務で省人化が進む可能性があります。
従業員の不安や抵抗感が生まれることがあり、社内の雰囲気やモチベーションに影響を及ぼすかもしれません。
AIに任せる業務と人が担う業務の役割分担を明確にし、スキルの再構築(リスキリング)や社内コミュニケーションの強化を図ることが大切です。
必ず成功するとは限らない
AIを導入すれば必ず効果が出る保証はありません。精度の高い成果を得るには、十分なデータの収集と整備が前提となるため、質や量が不足していると的確な分析や判断が期待できなくなります。
また、適切に業務に組み込めなければ、かえって作業が複雑化し、逆効果になることも考えられるでしょう。
AIに過剰な期待はせず、従来の業務をサポートしてくれるツールとして捉え、目的や課題に合った形で慎重に導入することが大切です。
判断の根拠や責任の所在が不明瞭になる
AIの判断はブラックボックス化されやすく、なぜその結果になったのかを説明するのが難しいケースがあります。商品開発の重要な意思決定にAIを用いた場合、判断の責任の所在が曖昧になり、トラブル時の対応や責任の所在を明確化することが困難になる可能性も考えられます。
AIを過信せず、最終的な意思決定は人間が担う体制を整えることが重要です。責任の所在やトラブル時の対応手順をあらかじめ明確にしておき、リスクを最小限に抑えましょう。
セキュリティリスクを伴う
AIを活用するには、膨大なデータの収集・保存・分析が必要となり、なかには自社の機密情報や個人情報が含まれる場合があります。
重要な情報を扱う場合には、サイバー攻撃や情報漏洩などのセキュリティリスクが発生する可能性が高まります。特にクラウドサービスや外部ツールと連携する場合、データの取り扱いや管理体制をしっかりと確認し、必要な対策を講じることが大切です。
AIを導入する際には、リスクマネジメントやセキュリティの強化を行いましょう。セキュリティリスクを伴わない用途から徐々に使用することも選択肢のひとつです。
商品開発にAIを導入する際の手順は?
商品開発のどの工程にAIを活用できるか、事例を含めて説明してきました。続いては、実際に商品開発にAIを導入する際の手順を解説します。
導入するAIによって手順は異なりますが、運用方法は大きく3つのステップに分かれます。
AIを上手に活用するためには、「設計」「検証(PoC)」「実装と運用」の3つのステップを意識して、導入すると良いでしょう。
しかし、AIは種類が多いため、どのAIを導入したら良いか悩む方もいるのではないでしょうか。AIの情報収集をするなら、関連メーカーや関連製品が集まる展示会へ足を運ぶことをおすすめします。
導入前に最新技術や製品に関する情報収集を行うことで、自社の課題解決に適したAI技術を導入できる可能性が高まります。
飲料業界の商品開発に活用できる最新技術の情報収集なら「ドリンクジャパン」へ
飲料業界に携わっており、AI活用など商品開発に活用できる最新技術の情報収集に興味があるなら、ぜひ「ドリンクジャパン」にご来場ください。「ドリンクジャパン」は、飲料・液状食品に関する開発・製造に特化した展示会です。
商品開発、製造、検査に関する最新技術が出展し、飲料・酒類・液状食品メーカーが製品導入・比較検討のために世界中から来場します。また、技術展示に加え、他社事例や業界の最新動向を把握できるセミナーも併催しており、商品開発のヒントを効率的に収集できます。
展示会は事前登録すれば無料で入場可能です。AIをはじめとする商品開発に役立つ最新情報を収集したい方は、ぜひご来場ください。
また、出展側として参加することも可能です。大手飲料メーカーから地場の飲料メーカーまで全国から来場するため、自社製品の認知度向上や他社とつながる機会にご活用いただけます。具体的な商談・リード案件獲得につながる可能性もあるので、ぜひ出展側での参加もご検討ください。
商品開発へのAIの活用は今後も増える見込み
AIの市場規模は年々拡大しており、近年では商品開発への活用も進んでいることから、今後もAIを導入する企業が増加すると見込まれます。
商品開発時にAIが活用されるタイミングは品質管理やマーケティング、パッケージデザインなど多岐にわたります。導入にあたっては、初期費用がかかる可能性が高い他、導入後も適切な運用が必要なため、事前の準備が重要です。
導入する際には、事前に商品や用途に適したAIに関する情報収集を行いましょう。飲料業界に携わっており、商品開発に関する悩みやAIの活用を検討しているなら、ぜひ「ドリンクジャパン」にご来場ください。
会場には大手飲料メーカーから地場の飲料メーカーまで全国から来場するため、自社製品の認知度向上や商談獲得の機会にもご活用いただけます。
▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)
エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。
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