ジュース・果汁飲料のパッケージデザインとは?定義や表示のルールを詳しく解説

ジュースや果実飲料を選ぶとき、パッケージのデザインで決めることはありませんか。

実は、ジュースのパッケージデザインには、法律で決められたルールがあり、含まれる果汁の割合によって使えるデザインが違います。メーカーには、消費者に正確な情報を伝えつつ、魅力的なパッケージを作ることが求められています。

本記事では、ジュースのパッケージデザインのルールをわかりやすく解説し、果汁の割合に応じてどんなデザインが使えるのか解説します。詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。




そもそもジュースの定義とは?

果汁飲料は広く「ジュース」という名称で呼ばれますが、表示には厳密な定義が存在します。果実飲料に関するルールとして定められた「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」によって細かく決められており、販売する際にはしっかりと明記しなければなりません。

続いて、果実飲料の分類を詳しく解説します。


「ジュース」と表示できるのは果汁100%のもののみ

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」によると、ジュースと記載できるのは「果汁100%」のみです。ジュースは、果汁の種類・果粒の有無などによって、さらに以下4種類に分類されます。

  • 果実ジュース
  • 果実ミックスジュース
  • 果粒入り果実ジュース
  • 果実・野菜ミックスジュース

以下で詳しく解説します。


果実ジュース

1種類の果実の搾汁または還元果汁を100%使っているものは「果実ジュース」に分類されます。少量の砂糖類や添加物の含有はOKとされています。「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」にて、果実ジュースは以下のとおり定義されています。

1種類の果実の搾汁若しくは還元果汁又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)をいう。ただし、オレンジジュースにあってはみかん類の果実の搾汁、濃縮果汁若しくは還元果汁を加えたもの(みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満であって、かつ、製品の糖用屈折計示度(加えられた砂糖類、蜂蜜等の糖用屈折計示度を除く。)に寄与する割合が10%未満のものに限る。)を含む。

なお、果汁100%ジュースの「濃縮還元」と「ストレート」の違いをより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:果汁100%ジュース「濃縮還元」と「ストレート」の違いは?見分け方を解説


果実ミックスジュース

使用している果実が2種類以上の場合の名称は「果実ミックスジュース」になります。少量の砂糖類や添加物の含有はOKとされており、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」にて、果実ミックスジュースの定義は以下のとおりです。

2種類以上の果実の搾汁若しくは還元果汁を混合したもの又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。また、みかん類の果実の搾汁又は還元果汁を加えたオレンジジュースであって、みかん類の原材料及び添加物に占める重量の割合が10%未満、かつ、製品の糖用屈折計示度に寄与する割合が10%未満のものを除く。)をいう。


果粒入り果実ジュース

「果粒入り果実ジュース」は、果実の搾汁か、還元果汁を100%使用した飲料をさします。加えて、かんきつ類果実のさのう、もしくはかんきつ類以外の果実の果肉の細切を加えた飲料です。少量の砂糖類や添加物の含有は認められています。

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」にて、果粒入り果実ジュースは以下のとおり定義されています。

果実の搾汁若しくは還元果汁にかんきつ類の果実のさのう若しくはかんきつ類以外の果実の果肉を細切したもの等(以下「果粒」という。)を加えたもの又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)をいう。


果実・野菜ミックスジュース

「果実・野菜ミックスジュース」には、果汁と野菜汁の使用割合が100%で、かつ果汁の使用割合が50%を上回る飲料が該当します。少量の砂糖類や添加物の含有は認められています。

「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」にて、果実・野菜ミックスジュースは以下のとおり定義されています。

果実の搾汁若しくは還元果汁に野菜汁を加えたもの又はこれらに砂糖類、蜂蜜等を加えたもの(ただし、砂糖類、蜂蜜等の原材料及び添加物に占める重量の割合が5%以下であること。)であって、果実の搾汁又は還元果汁の原材料及び添加物に占める重量の割合が50%を上回るものをいう。


果汁10%以上100%未満は「果汁入り飲料」

果汁10%以上100%未満、かつ果実が主原料の場合は「果汁入り飲料」に分類されます。果汁入り飲料はジュースとは表現できないため、パッケージには「果汁入り飲料」と記載されます。


果汁10%未満は「その他の飲料」

果汁の使用割合が10%未満で、以下に該当すると「その他の飲料」に分類されます。商品名に果実名を使用した飲料で、色などによって果汁使用を連想させる飲料が該当します。

こちらも果汁入り飲料と同じく、「ジュース」とは記載できません。なお、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」によると、以下のものは除くとされています。

  1. 不当景品類及び不当表示防止法第31条第1項の規定に基づき設定された他の公正競争規約の適用を受けるもの 
  2. 「酒税法」(昭和28年法律第6号)に規定する酒類
  3. 粉末飲料
  4. 紅茶飲料(商品名又は名称から紅茶飲料と判断されるもの)
  5. 野菜を破砕して搾汁又は裏ごしをし、皮、種子等を除去したもの(これを濃縮したもの又は濃縮したものを希釈して搾汁の状態に戻したものを含む。) が混合されたもので、野菜汁の使用量が果汁の使用量を上回るもの

つまり、「酒税法」に規定する酒類などは、その他の飲料に該当しません。


無果汁は「清涼飲料水」に分類される

果汁や果肉が使用されていない、無果汁の飲料は「清涼飲料水」に分類されます。なお、「果実飲料等の表示に関する公正競争規約」では、以下のとおり定められています。

  • 果汁の使用割合が5%未満のものにあっては、「果汁0%」又は「無果汁」と表示する。
  • 果汁を含まないものにあっては、「無果汁」と表示する。

「無果汁」と表示されているのに、原材料表示に「果汁」が記載されている商品があるのは、果汁の使用割合が5%未満の場合も「無果汁」と表示するルールのためです。

なお、清涼飲料水についてより詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

▶関連記事:清涼飲料水とは?体に悪いって本当?定義や健康的な取り入れ方を解説



果実飲料のパッケージデザインのルール

果実飲料のパッケージデザインには、含まれる果汁の割合によって法律で定められたルールがあります。果汁の割合ごとに、どんなデザインが使用可能で、どんなデザインが不当表示なのかを詳しく解説します。

  • 果汁100%のみ「果汁のしずく」や「スライス」を使える
  • 「果汁5~100%」はリアルな果実の絵を使用できる
  • 「果汁5%未満」の飲料は図案化した絵のみOK
  • 無果汁の「清涼飲料水」は果実を表現した写真・絵・図案は使えない

果汁100%のみ「果汁のしずく」や「スライス」を使える

パッケージデザインに関して、果汁100%のジュースのみ「果汁のしずく」や「スライス」を使えます。「果実飲料等の表示に関する公正競争規約及び施行規則」には、以下の記載があります。

果汁入り飲料及びその他の飲料にあっては、果実から果汁のしずくが落ちている等の表示及び果実のスライス等の表示は不当表示に該当する。

「絞った果汁そのままのものが使われている」「それが主原料である」と消費者に誤認される恐れがあるため、果汁100%の飲料以外は果汁のしずくやスライスの表示はできません。

なお、果汁のしずくではないとわかる無色透明な水滴は、不当表示には該当しないとされているため、果汁100%以外の果実飲料でも使用可能です。果汁100%の飲料だけが果汁のしずくやスライスの状態を示すイラストや写真を使用でき、果実のフレッシュさをより消費者にアピールできます。


「果汁5~100%」はリアルな果実の絵を使用できる

果汁100%以外の飲料は果物の断面のイラストや写真を使用できませんが、「果汁5~100%」の果実飲料は、質感や立体感を用いた「リアルなイラスト」や「絵」を使用できます。

断面ではないものの、果実丸ごとのリアルなイラストをデザインに加えられます。果実のリアルな質感を表現し、消費者に果実感をアピールする工夫が大切です。


「果汁5%未満」の飲料は図案化した絵のみOK

果汁5%未満の飲料に関しては、リアルな果物のイラストや写真は使用できません。パッケージは消費者への情報提供の一環のため、写実的ではない「図案化した絵」のみ使用可能です。

果実の立体感やグラデーションがなく、平面的なイラストならば使えます。しかし、図案化した絵であっても、断面が表示されていると一切使えないため、パッケージデザイン時には注意が必要です。


無果汁の「清涼飲料水」は果実を表現した写真・絵・図案は使えない

清涼飲料水は無果汁であるため、商品名やパッケージに果実の名称を使用することは認められていません。パッケージに果実の絵や写真、イラスト、図案を使えず、「果実飲料」が使える表示が「清涼飲料水」では不当表示になってしまいます。

どのようなデザインや表現が不当表示に当たるのか、パッケージデザインをする際は、事前にしっかり把握しましょう。



ジュースなど飲料の開発・製造に関する情報収集なら「ドリンクジャパン」へ

ジュースをはじめ、果実飲料のパッケージデザインでは、法律を遵守したイラストの使用や文字表示が必須です。ジュースの開発・製造を行う場合、しっかりと法律を理解して開発を進めてください。

パッケージデザインも含め、ジュースの開発・製造を検討しているなら、飲料や酒類に特化した展示会「ドリンクジャパン」への来場がおすすめです。

ドリンクジャパンは、日本で唯一の飲料・液状食品の開発・製造に特化した国際商談展です。国内外のパッケージ関連製品や最新技術が出展します。製造・包装機械、原料・素材、販促商品などを扱う様々な関連企業があり、最新の技術トレンドを一度に把握できます。

併催されるセミナーでは、有名飲料ブランドの開発者による商品開発秘話や飲料業界の今後に関してなど、最新の業界情報を入手できます。

また、出展者として参加すれば、ジュースの製造・販売を考えている企業に向けて自社の製品をPRし、商談の場としてもご活用いただけます。

来場、出展ともにメリットがあるので、ぜひご検討ください。

■ドリンクジャパン(2025年12月3日-5日、幕張メッセ)



パッケージデザインのルールを理解してジュースを製造しよう

果汁の割合などに応じて、果汁飲料は法律で細かく分類されています。広く使われている「ジュース」と表示できるのは、「果汁100%」だけであり、他の果汁割合では、ジュースと表記できません。

果汁の割合によって、パッケージにどのようなデザインを使えるかも異なります。「果汁のしずく」や「スライス」の画像・イラストを使用できるのは果汁100%の飲料のみです。不当表示を行うと、厳しく罰せられるため、しっかりと理解した上で魅力的な商品開発を行いましょう。

なお、ジュースのパッケージを含め、飲料の開発・製造について知識を深めたいなら、ドリンクジャパンへの来場をぜひご検討ください。

■ドリンクジャパン(2025年12月3日-5日、幕張メッセ)
「ドリンクジャパン」詳細はこちら



▶監修:宮崎 政喜(みやざき まさき)

エムズファクトリー合同会社 代表 / 料理人兼フードコンサルタント
出身は岐阜県、10代続く農家のせがれとして生まれ、現在東京在住。プロの料理人であり食品加工のスペシャリスト。また中小企業への経営指導、食の専門家講師も務めるフードコンサルタントでもある。飲食店舗・加工施設の開業支援は200店舗以上。料理人としてはイタリアトスカーナ州2星店『ristorante DA CAINO』出身。昨今、市町村や各機関からの依頼にて道の駅やアンテナショップも数多く手掛ける。今まで開発してきた食品は1000品目を越え、商品企画、レシピ開発、製造指導、販路開拓まで支援を日々実施している。



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